駿河国風土記

駿河国風土記について

『駿河国風土記』は、奈良時代に編纂された駿河国に関する地誌であり、その内容は多くの逸文を通じて知られています。残念ながら、原典は現存しておらず、いくつかの著作の中で引用された断片が『駿河国風土記逸文』と呼ばれています。これらの逸文は、当時の人々や習慣、地域の文化を知る手がかりとなっています。

駿河の国号の由来

駿河の国の名前の由来については、下河辺長流の著書『枕詞燭明抄』に記されています。彼は、風土記に「駿河」は「富士川の流れが非常に速い」ことから名付けられたと引用しました。このことから、駿河という名前は自然環境に由来していることが窺えます。

三保の松原

三保の松原にまつわる伝説は、林羅山の『本朝神社考』の中に見られます。その逸話は、昔、神女が天から降りてきた時のことから始まります。彼女は松に羽衣を掛けましたが、ある漁師に奪われてしまいます。彼女はその漁師の妻となりましたが、やがて羽衣を見つけて天に帰ります。漁師もまた、仙人となって天に昇ったと言われています。この物語は、能楽『羽衣』によっても広く知られています。

てこの呼坂

続いて、「てこの呼坂」という場所についての逸話も興味深いものです。下河辺長流の『続歌林良材集』では、「てこ」が東国の方言で「女」を意味すると解説されています。この地には、不来見の浜に住む妻に通う神がいましたが、その夫は荒ぶる神がいる山を越えなければなりませんでした。荒ぶる神が通る道を塞いでいるため、夫はその神がいない時しか妻に会えず、妻は毎晩、山の近くまで来て夫を待っていました。その際、妻は夫の名前を呼ぶため、その場所が「てこの呼坂」と名付けられたと伝えられています。

富士の雪

最後に、富士山に関連する伝説として仙覚が『万葉集註釈』の中で触れています。彼は「富士の雪は6月15日になくなり、子の刻以降に再び雪が降る」と述べ、これは先行する書物や先人の語りを元にしています。この情報は、富士山の雪の降り方や季節の移ろいを知る貴重な手がかりとなっています。

結論

以上のように、『駿河国風土記』から得られる逸文は、駿河国の文化や伝説、自然環境に関する貴重な情報源です。この古文書に関連する逸話は、地域の歴史や神話、そして当時の人々の生活感を伝える重要な要素となっています。今後もこれらの逸文を通じて、駿河の文化的背景を探求していくことが求められます。

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