騎士鉄十字章

騎士鉄十字章：ナチス・ドイツの栄光と影

第二次世界大戦中、ナチス・ドイツによって制定された騎士鉄十字章は、鉄十字章の中でも特に高い栄誉を誇る軍事勲章でした。鉄十字章はナポレオン戦争、普仏戦争、第一次世界大戦でも制定されていましたが、騎士鉄十字章という階級が設けられたのは第二次世界大戦時のみという点に、その特別な位置付けが見て取れます。

制定と等級

1939年9月1日、第二次世界大戦開戦と共に、祖国のために戦った者たちを称える目的で鉄十字章が再制定されました。この法令にはヒトラーを始めとするナチス政権の中枢メンバーの署名があり、大十字章、騎士鉄十字章、一級[[鉄十字章]]、二級鉄十字章の4等級が定められました。上位の勲章を受けるには下位の勲章の受章が必須であり、例外は認められませんでした。しかし、例外的に、抜群の戦功を挙げたにもかかわらず鉄十字章を未受章の兵士には、騎士鉄十字章と同時に下位勲章が授与されるケースもありました。

大十字章は、空軍総司令官ヘルマン・ゲーリング元帥のみに授与されたため、実質的には騎士鉄十字章がドイツ軍人にとって最高の栄誉となりました。そのデザインは、下位の鉄十字章とほぼ同じで、中央にはハーケンクロイツ、裏面には1813年（鉄十字章の最初の制定年）の数字が刻まれていました。材質は黒く無光沢の鉄製で、純銀の枠で縁取られており、上部にはリボンを通すループがついていました。

戦争が長期化するにつれ、騎士鉄十字章受章者への更なる褒賞が必要となり、1940年以降、柏葉付、柏葉・剣付、柏葉・剣・ダイヤモンド付、そして金柏葉・剣・ダイヤモンド付騎士鉄十字章といった上位等級が制定されました。これらの等級は、騎士鉄十字章受章者の中でも特に顕著な戦功を挙げた者に授与されました。

授与と佩用

騎士鉄十字章の授与は、ヒトラーの承認を経て、直属の上官によって行われました。受章者には、まず予備勲記が手渡され、後に正式な勲記が皮製のフォルダに入れて贈呈されました。しかし、戦時下という状況から、正式な勲記を受け取れた者はごく少数でした。

騎士鉄十字章は、専用の綬（リボン）を用いて首に佩用しました。綬の色は黒、白、赤のドイツ国旗の色で、二級鉄十字章の綬と同じデザインでしたが、幅はより広かったです。綬の装着を容易にするため、ゴム紐とフックが付けられることも多かったです。また、戦功十字章騎士章と同時に佩用することも許可されましたが、その際は騎士鉄十字章を下、戦功十字章騎士章を上に佩用することが定められていました。

1942年には、騎士鉄十字章受章者は階級に関わらず、先に敬礼を受ける権利を有することが定められました。日本の金鵄勲章のような家宝として扱われるのではなく、武勲の証として戦場で佩用されるのが一般的でした。

レプリカと戦後の扱い

実物の授与を受けるのが困難な場合、二級鉄十字章を代用として佩用したり、乗組員が作成したレプリカを着用することもありました。中には、公式の勲章が授与された後も、レプリカの方を着用し続ける者もいたようです。また、オリジナルの勲章は自宅に保管し、自費でレプリカを購入して佩用するのが一般的だったといいます。

戦後、鉄十字章の佩用は認められていますが、ハーケンクロイツを公の場で使用することは禁止されているため、公の場で佩用するにはハーケンクロイツを削除するか、柏葉に置き換える必要があります。

外国人受章者

騎士鉄十字章は、ドイツ人だけでなく、同盟国や協力国の軍人にも授与されました。ルーマニア、イタリア、ハンガリー、スペイン、スロバキア、フィンランド、日本などから、計44名の外国人受章者がおり、その中には日本海軍の山本五十六元帥も含まれています。山本五十六は、柏葉・剣付騎士鉄十字章を受章し、外国人受章者の中で最高の位階に達しています。

各等級の著名な受章者

各等級の騎士鉄十字章を受章した者の中には、ロンメル元帥、マンシュタイン元帥、グデーリアン将軍など、第二次世界大戦で名を馳せた多くの著名な軍人が含まれています。これらの受章者は、ドイツ国内で英雄視され、その功績は今もなお語り継がれています。

まとめ

騎士鉄十字章は、第二次世界大戦下のナチス・ドイツにおいて、その最高位の軍事勲章の一つとして、多くの兵士の勇気と戦功を象徴する存在でした。その制定から授与、佩用、そして戦後の扱いまで、様々な側面から見ていくことで、当時の歴史的背景や社会状況を深く理解することができるでしょう。しかしながら、その輝かしい栄光の陰には、ナチス・ドイツの残虐な戦争犯罪と悲惨な歴史が隠されていることを忘れてはならないでしょう。

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