高任和夫

高任和夫（たかとう かずお）は、1946年に生まれた日本の小説家です。宮城県に生まれ、東北大学法学部を卒業しました。その作家活動は、自身のユニークなキャリアに基づいています。

大学を卒業後、高任氏は大手総合商社である三井物産に入社します。数年間広島での勤務経験があるものの、そのキャリアの大部分は東京本社で過ごしました。社内では主に審査部門に所属し、国内審査管理室長という重要なポストを歴任しています。会社員としての経験を活かし、1983年には『商社審査部25時 知られざる戦士たち』で兼業作家としてデビューを果たしました。

しかし、バブル経済の崩壊に伴い、企業の審査部門にかかる負担が増加したため、日々の業務が多忙を極め、創作活動に充てる時間の確保が難しくなりました。この状況を踏まえ、会社を辞める決意を固めます。早期退職制度を活用し、1996年に50歳で三井物産を退社して以降は、専業作家として執筆活動に専念する道を選びました。

作家としての主な活動分野は、その商社時代の経験を色濃く反映した経済小説や企業小説です。リアリティのある経済描写や企業内の人間ドラマを描き出し、多くの読者から支持を得ています。長らくこの分野を中心に執筆していましたが、2009年3月には『青雲の梯 老中と狂歌師』を発表し、時代小説という新たなジャンルにも挑戦しています。歴史上の人物や出来事を題材に、独自の視点から物語を紡ぎ出しています。

主な著書には以下のような作品があります。

『商社審査部25時 知られざる戦士たち』（1985年、商事法務研究会） - のち徳間文庫、講談社文庫
『四十代は男の峠』（1989年、講談社） - のち徳間文庫
『銀行検査部25時』（1990年、講談社） - のち文庫
『過労病棟』（1992年、講談社） - のち文庫
『架空取引』（1997年、講談社） - のち文庫
『転職 会社を辞めて気づくこと』（1998年、講談社） - 文庫版タイトル：『依願退職』
『密命』（1999年、講談社） - 文庫版タイトル：『粉飾決算』
『告発倒産』（2000年、講談社） - のち文庫
『仕事を愉しむ 老若男女24人の独立・起業物語』（2000年、日経BP社）
『リストラ・転職・起業』（2000年、岩波ブックレット）
『幸福の不等式』（2002年、日本放送出版協会） - 講談社文庫版タイトル：『起業前夜』
『燃える氷』（2003年、祥伝社） - のち講談社文庫
『告発封印 連作短編集』（2004年、光文社カッパノベルス） - のち文庫
『債権奪還』（2004年、講談社） - のち文庫
『仕事の流儀 28人の達人たちに訊く』（2004年、日経BP社） - 文庫版タイトル：『生き方の流儀』（講談社文庫、2010年）
『偽装報告』（2006年、光文社） - のち文庫
『エンデの島』（2007年、光文社） - のち文庫
『敗者復活戦』（2008年、講談社） - のち文庫
『罪びと』（2008年、光文社） - のち文庫
『青雲の梯 老中と狂歌師』（2009年、講談社） - （田沼意次・大田南畝）文庫版タイトル：『江戸幕府最後の改革』
『月華の銀橋 勘定奉行と御用儒者』（2009年、講談社） - （荻原重秀・新井白石）文庫版タイトル：『貨幣の鬼 勘定奉行 荻原重秀』
『天下商人 大岡越前と三井一族』（2010年、講談社）
『嵐の後の破れ傘 激動の江戸を生きた三文人』（2012年、光文社） - （平秩東作、太田南畝、山東京伝）文庫書き下ろし
『光琳ひと紋様』（2012年、潮出版社）

自身の会社員としての経験を深く掘り下げた経済・企業小説から、歴史の舞台に挑む時代小説まで、幅広いテーマで精力的に執筆活動を続けている作家です。

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