高場乱

高場乱（たかば おさむ）：幕末の女傑、その生涯と教育

高場乱（たかば おさむ）は、天保2年（1831年）に生まれ、明治24年（1891年）に没した、幕末から明治にかけての激動の時代を生きた女性です。儒学者、眼科医、そして教育者として多岐にわたる分野で活躍し、特に教育者としては、後に玄洋社を率いる頭山満をはじめ、多くの国士を育成しました。「人参畑の先生」として親しまれた彼女の生涯は、日本の近代化に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

博多に生まれた才媛

高場乱は、筑前国博多瓦町（現在の福岡市）で、代々福岡藩の藩医を務める眼科医の名門、高場家の末子（二女）として生を受けました。幼名は「養命」と名付けられ、男子として育てられたという逸話も残っています。10歳で男性として元服した事実は、当時の社会において異例であり、彼女の特異な存在を示しています。16歳で結婚するも、自ら離縁し、20歳の時に亀井昭陽の亀井塾に入門。当時、身分や性別を問わない自由な学風で知られた亀井塾で、原采蘋など多くの女性たちと共に学問を修めました。

人参畑塾での教育

明治6年（1873年）、高場乱は福岡藩住吉村の薬用人参畑の跡地（現在の博多駅近く）に私塾「興志塾」（通称「人参畑塾」）を開設し、医業の傍ら教育に携わる道を選びました。彼女の塾には、乱暴者と評判の者も多く集まったと言われています。世間からは「人参畑の女傑」と呼ばれ、塾も「梁山泊」と揶揄されることもありましたが、乱自身は生来虚弱で華奢であったと伝えられています。明治7年（1874年）頃には、後に玄洋社を率いる頭山満が入門し、平岡浩太郎、進藤喜平太、箱田六輔、武部小四郎など、後の玄洋社の主要メンバーが興志塾で学びました。

福岡の変と晩年

明治10年（1877年）に高弟たちが起こした福岡の変に関与した疑いをかけられ、一時拘束されるも、後に釈放されています。その後は、頭山らが結成した向陽社（玄洋社の前身）内部の抗争を仲裁するなど、弟子たちの行く末を見守りました。しかし、自由民権運動の高まりの中で、多くの弟子たちが命を落としていくのを見ることになります。特に、弟子の一人である来島恒喜が大隈重信へのテロを仕掛けた上で自殺したことには大きな衝撃を受けたとされています。来島の自殺後、高場乱は病床に伏し、医者でありながら一切の治療を拒み、明治24年（1891年）3月31日に59歳でこの世を去りました。

墓碑と講談

彼女の墓は福岡市の崇福寺にあり、墓碑銘「高場先生之墓」は勝海舟の揮毫によるものです。生誕190年には牛に横乗りする記念像が建てられました。また、彼女の生涯は講談にもなっており、神田紅によって「近代日本の女傑 男装帯刀の女医 高場乱」として語り継がれています。

高場乱は、激動の時代を生き抜き、教育者として多くの若者を育成し、日本の近代化に貢献した女性です。その生涯は、現代においても多くの人々に感銘を与え続けています。

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