高山岩男

高山岩男：京都学派の哲学者、教育者としての生涯

高山岩男（1905-1993）は、20世紀日本の哲学者として知られる人物です。京都帝国大学を首席で卒業し、京都学派の中心人物である西田幾多郎や田辺元らに師事しました。その生涯は、学究としての探求心と、教育者としての熱意に貫かれたものでした。

京都学派での研鑽と華々しい経歴

山形県に生まれた高山は、西田幾多郎や田辺元の著作に感銘を受け、京都帝国大学文学部哲学科に進学します。この時代は、京都学派が全盛期を迎え、西田幾多郎、波多野精一、田辺元、和辻哲郎といった錚々たる教授陣が教鞭を執っていました。特に田辺元からは多大な影響を受け、その才能は西田幾多郎からも高く評価され、大学を首席で卒業しています。

卒業後は第三高等学校講師などを経て、1938年には京都帝国大学文学部助教授、1945年には教授に昇進します。しかし、1946年にはGHQの公職追放により大学を退職。浜名湖畔で隠遁生活を送る傍ら、静岡新聞の論壇欄に寄稿するなど、活動を続けました。

公職追放解除後、多様な教育機関での活躍

追放解除後は、神奈川大学、日本大学、東海大学など複数の大学で教鞭を執り、最終的には秋田経済法科大学学長に就任しました。それぞれの大学において、高山は自身の哲学思想を基盤とした教育を実践し、多くの学生に影響を与えました。神奈川大学での在職中には、学長であった米田吉盛の建学精神に共鳴し、大学の発展に貢献しています。日本大学では、高度経済成長期における左翼学生運動の高まりの中で、独自の立場から教育活動を行いました。

哲学思想と著作活動

高山の哲学は、ヘーゲル研究から始まり、「文化類型学」や「哲学的人間学」といった独自のテーマへと展開していきます。31歳で発表した『ヘーゲル』は、高坂正顕の『カント』と並ぶ傑作として、後の世代の研究者からも高く評価されています。また、戦時中には「世界史的立場と日本」と題した座談会に参加し、戦争を肯定的に捉える論を展開したことも知られています。戦後は、「場所的論理と呼応の原理」という独自の哲学体系を構築し、多くの著作を発表しました。これらは、倫理、宗教、社会、教育など多岐にわたる分野を網羅し、現代社会の課題に対する鋭い洞察を示しています。代表的な著作には、『哲学的人間学』『世界史の哲学』『場所的論理と呼応の原理』などがあります。

多様な教育活動

高山の教育活動は、大学での講義にとどまりません。玉川大学などでも教鞭を執り、広義の哲学的人間学、教育学への関心を深めています。また、自身の経験を踏まえ、教育に関する著作も多く残しています。

高山岩男の思想的遺産

高山岩男は、京都学派に連なる哲学者として、また、複数の大学で教鞭を執った教育者として、日本の思想界に大きな足跡を残しました。その著作は、今もなお、多くの研究者や学生に読み継がれ、現代社会の問題を考える上で重要な示唆を与え続けています。彼の生涯と業績は、学問への情熱と社会への責任感の両方を持ち合わせた、稀有な存在であったことを物語っています。彼の著作は、戦後の日本社会の混乱や激動を背景に、倫理や教育、社会構造など幅広いテーマを扱っており、現代社会の問題を考える上で重要な示唆を与え続けています。高山岩男の思想は、現代社会においても、深く考えるべき課題を与えてくれるでしょう。

受賞・家族

1988年には勲三等瑞宝章を受賞。息子は日本製紙クレシア元社長の高山武彦氏です。

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