高山族

高山族：台湾原住民の呼称と歴史

台湾の高山族は、複雑な歴史と多様な文化を持つ人々の総称です。その定義は時代や立場によって異なり、理解には注意が必要です。

呼称の変遷と定義

「高山族」という呼称は、広義には台湾原住民全体を、狭義には漢民族との同化が進んでいない山地部に住む諸民族を指します。漢民族との交流が深まり、同化が進んだ集団は「平埔族」と呼ばれて区別されてきました。

歴史的には、清朝時代には「生番」、日本統治時代初期には「生蕃」という呼称が用いられていました。「番」や「蕃」は、中華文明圏の外の民族を指す差別的な言葉でした。これに対し、漢化が進んだ集団は「熟番（熟蕃）」と呼ばれていました。

しかし、日本統治時代中期である1935年、台湾総督府は「戸口調査規定」において、「生蕃」と「熟蕃」という差別的な呼称を廃止し、「高砂族」と「平埔族」に改称しました。この改称は、秩父宮雍仁親王の要請によるものと言われています。

国民党政権下では、「台湾原住民族」という呼称が用いられるようになり、「高山族」という呼称は次第に使用されなくなりました。現在では、具体的な部族名（例：泰雅族、布農族など）が用いられるのが一般的です。

高山族を構成する部族

台湾原住民族は、地理的・文化的に多様な集団から構成されており、数多くの部族が存在します。主な部族として、以下のものが挙げられます。

泰雅族:
賽夏族:
布農族:
鄒族:
魯凱族:
排灣族:
卑南族:
阿美族:
達悟族:
太魯閣族:
撒奇萊雅族:
邵族:
賽德克族:
噶瑪蘭族: (平埔族群)
拉阿魯哇族:
卡那卡那富族:
大満族:
雅美族:

それぞれの部族は、独自の言語、文化、伝統を有しており、その多様性は台湾の大きな魅力となっています。

中国における高山族

中華人民共和国は、台湾を自国の領土の一部と主張しており、台湾の原住民を「高山族」として、中国の55の少数民族の一つに含めています。しかし、中国本土に居住する高山族の人口は非常に少なく、2010年現在で約4009人とされています。多くは河南省、福建省、広西省などに居住していると言われています。

高山族を描いた作品

高山族の人々の生活や文化を描いた作品も数多く存在します。有名な作品としては、李香蘭主演の映画『サヨンの鐘』（1943年）が挙げられます。これは、高砂族の娘サヨンの実話を基にした作品です。他にも、千葉真一主演の『カミカゼ野郎 真昼の決斗』（1966年）や、魏徳聖監督の『セデック・バレ』などがあります。これらの作品は、高山族の歴史や文化、そして彼らが抱えてきた困難などを伝える上で重要な役割を果たしています。

まとめ

「高山族」という呼称は、歴史的経緯や政治的状況によって、その意味合いが変化してきました。現在では、より具体的な部族名を用いることが一般的ですが、その歴史的背景を知ることで、台湾原住民への理解を深めることができます。多様な文化を持つ台湾原住民の歴史と文化を理解することは、台湾という社会を深く理解することに繋がります。

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