高島丸

高島丸（たかしままる）について

高島丸は、日本郵船が保有していた砕氷貨客船で、1942年の樺太航路用に建造されました。この船は日本で数少ない本格的な砕氷商船の一つで、近海における砕氷船としては、2011年時点で最大級の規模を誇ります。太平洋戦争中には日本陸軍に徴用され、千島列島方面への重要な輸送任務に従事しましたが、1944年6月にアメリカ海軍潜水艦により撃沈されました。

建造の背景

第二次世界大戦前、日本は樺太を統治していたため、砕氷機能を持つ商船の建造が盛んに行われていました。日本郵船系の近海郵船や大阪商船系の北日本汽船が定期航路を運航していた一方で、海軍には正規の砕氷艦は1隻しか存在せず、専用の砕氷船はごく限られていました。このことから、有事に備えるために軍の管理下で砕氷商船の建造計画が始まりました。その結果、同型船として日本郵船の高島丸と大阪商船の白陽丸が建造されることとなりました。

高島丸は、三菱重工業横浜船渠で建造され、1942年7月31日に竣工しました。船の基本的なサイズは長さ114.63メートル、総トン数5633トン、満載排水量8260トンで、当時の砕氷船としては非常に大きなものでした。その能力はおおよそ1メートルの氷を砕くことができ、特有の形状や構造をしていました。また、船体には独特の丸みを帯びたデザインが施されており、舷側も傾斜がかかっていました。

軍用船への改装

高島丸は竣工時にはまだ民間用に使われていましたが、1943年1月に陸軍への徴用が決定され、軍用の改装が行われました。この改装では、船首に10cm砲や20mm機関砲、対潜用の爆雷も追加されました。兵装担当の乗員もあり、陸軍の補給船として北千島への輸送任務に従事しました。結氷期には敵潜水艦の攻撃を避けるために氷の中を航行し、安全に補給物資を運搬することが可能でした。

1943年の後半には、北千島方面での運行が増加しました。この地域ではアメリカの潜水艦による脅威が高まっており、乗員たちは救命用耐寒水中服を支給されるなど、懸念が強まっていました。高島丸は重要な補給任務を果たし、無事に陸軍を支援しました。

最後の航海

高島丸の最後の航海は1944年6月です。このとき、陸軍の傷病兵や従業員、郵便物を載せた状態で小樽港から出港しました。多くの人を乗せていたため、駆逐艦「初春」の護衛を受けながら航行しました。しかし、旅の途中の松輪島近海でアメリカの潜水艦による攻撃を受け、魚雷が命中しました。この影響で船は徐々に浸水し、乗員や民間人は救命筏へと避難を始めました。

最終的に高島丸は午後11時07分に沈没。生存者の救助は迅速に行われましたが、船長の田中房次は船と運命を共にすることを選びました。この事件により、高島丸の喪失は日本陸軍にとって深刻な損失であり、士気を大きく揺るがすものでした。

砕氷船としての高島丸の功績は、戦争中の北方作戦において重要な役割を果たしており、その沈没は戦局にも大きな影響を与えたのです。

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