高島章貞

高島章貞：幕末を駆け抜けた医師、歌人、志士

高島章貞(1804-1869)は、江戸時代後期の信濃国安曇郡（現在の長野県安曇野市）で活躍した人物です。医師として、桂園派の歌人として、そして尊王攘夷運動に関わった志士として、多様な顔を持つ生涯を送りました。幼名は挹武、字は以徳、歌人としては星園と号しました。

幼少期と教育

文化元年(1804年)、医師の高島東水の子として生まれました。祖父の代から続く医業を受け継ぎながら、幼少期からその才能を認められ、6歳にして京都に上り、桂園派歌人として名高い香川景恒の私塾「東塢塾」に入門。優れた歌才を磨きました。

上高地と歌の道

文化14年(1817年)、上高地の穂高神社奥社に参詣した経験を元に『穂高嶽記』を著しました。この作品は、彼の郷土への深い愛情と観察眼を示すものと言えるでしょう。その後も歌人としての道を歩み、師である香川景恒の命を受け、同郷の歌人たちと共に桂園派歌風を広めるために江戸へ赴きました。

江戸での活動と志士との交流

江戸では、父と共に京橋で医業を営みながら、開国論者である佐久間象山ら多くの尊王攘夷派の志士と交流を深めました。この経験を通して、高島章貞自身も倒幕の志を強く抱くようになります。

帰郷と教育活動

天保15年(1844年)、郷里に戻り、家業の医業を継承する傍ら、寺子屋「星園塾」を開き、教育にも携わりました。嘉永7年(1854年)、ペリー来航後の情勢下、幕府から外国船来航に対する警備を命じられた藩主に従軍したいと願い出ましたが、士族ではないという理由で却下されました。

西洋医学への関心と著作

佐久間象山から学んだ西洋医学の知識を基に、『俗通あめりか伝』を著しました。この著作は、当時まだ限られた人しか知らなかったアメリカの情報を紹介するもので、彼の先進的な視点を示しています。安政5年(1858年)には、穂高神社の歴史を考察した『寒郷炉譚』を完成させました。現在も穂高神社境内にその筆塚が残っています。文久元年(1861年)には、桂園派歌人としての集大成とも言える『星園和歌集』を著しました。

最期

明治2年(1869年)、西園寺公望の命を受け、新たな政府樹立のために上洛しましたが、近江国水口宿で毒殺されました。

高島章貞が残したもの

高島章貞は、医師、歌人、志士という多様な顔を持つ人物でした。彼の生涯は、激動の幕末期を生きた一人の人物像を浮き彫りにし、安曇野の歴史と文化、そして日本の近代化への道程を理解する上で貴重な資料となっています。彼の著作は、現代においても研究され、様々な角度からその生涯が分析されています。その功績は、現在も安曇野の地で語り継がれています。

参考文献

丸山楽雲著 『高島章貞』1979年
山崎佐喜治著 『安曇野の先覚者 高島章貞伝』2009年
* 『高嶋章貞述 俗通あめりか伝 原文』『高嶋章貞述 俗通あめりか伝 解読文』穂高古文書勉強会 2012年

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