高木貞敬

高木 貞敬

高木 貞敬（たかぎ さだゆき）は、昭和から平成にかけて活躍した日本の神経生理学者です。

• - 生没年: 1919年（大正8年）3月19日 - 1997年（平成9年）10月11日
• - 出身地: 京都府京都市

経歴

高木貞敬は、1944年に東京帝国大学医学部を卒業後、同大学で研究者の道を歩み始めました。1952年には、後根後索に関連する遅延電位についての研究で、東京大学より医学博士の学位を取得しています。その後、東京大学医学部の講師を務めた後、1954年に群馬大学医学部生理学科の教授に就任し、長年にわたり教育と研究の中心的な役割を担いました。

研究活動の傍ら、海外での研鑽も積んでいます。1954年から1957年にかけてイリノイ大学に、また1964年から1965年にはミシガン大学に留学し、国際的な視野を広げ、自身の研究テーマを深めました。1983年には群馬大学を定年退官し、名誉教授の称号を授与されました。

研究と業績

高木貞敬博士の研究は、特に感覚生理学、中でも嗅覚の神経メカニズムに大きな焦点を当てていました。嗅覚情報の脳内での処理過程や、嗅覚と他の脳機能との関連性について、先駆的な研究を行いました。また、記憶の形成メカニズムや脳の機能全般にも強い関心を持ち、幅広いテーマで研究を展開しました。

研究成果を多くの論文として発表するとともに、一般読者向けに科学の知見を分かりやすく解説する著作も多数執筆しました。主な単著としては以下のものが挙げられます。

• - 『嗅覚の話』（岩波新書、1974年）
• - 『記憶のメカニズム』（岩波新書、1976年）
• - 『子育ての大脳生理学』（朝日新聞社、1980年、のち選書）
• - Human olfaction（東京大学出版会、1989年）
• - 『脳を育てる』（岩波新書、1996年）

特に『記憶のメカニズム』は、その優れた内容が高く評価され、毎日出版文化賞を受賞しています。これらの著作は、専門家のみならず、広く一般の人々にも生理学や脳科学への関心を高める上で大きな影響を与えました。

また、他の研究者との共編著や、海外の重要な文献の翻訳も手掛けています。

• - 共編著: 『情報科学講座 生体情報 8 中枢神経制御 3』（大村裕、佐藤昌康と共著、共立出版、1971年）、『匂いの科学』（渋谷達明と共編、朝倉書店、1989年）
• - 翻訳: ラスムッセン著『主要神経路』（医学書院、1961年）、ロバート・バートン著『ニオイの世界 動物のコミュニケーション』（群馬大学医学部嗅覚研究グループと共訳、紀伊國屋書店、1978年）

これらの活動を通じて、日本の生理学、特に神経生理学分野の発展と国際的な交流に貢献しました。

受賞・叙勲

長年にわたる研究と教育の功績は高く評価され、数多くの栄誉に輝きました。

• - 1976年: 『記憶のメカニズム』により毎日出版文化賞を受賞。
• - 1983年: 内藤記念科学振興賞を受賞。
• - 1983年: 紫綬褒章を受章。
• - 1989年: 勲二等瑞宝章を受章。

晩年

定年退官後も研究活動や執筆を続けましたが、1997年10月11日に膵臓癌のため逝去しました。高木貞敬博士の業績は、特に嗅覚の神経生理学研究における重要な貢献として、今なお記憶されています。

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