高木重朗

高木重朗の生涯と業績

高木重朗（たかぎ しげお、1930年8月8日 - 1991年1月7日）は、日本の奇術研究家として知られるアマチュアマジシャンです。東京に生まれ育った彼は、若い頃から奇術に魅了されるようになりました。

奇術との出会いと学歴

彼が奇術に興味を持つきっかけとなったのは、1935年ごろに新橋演舞場で目にした松旭斎天勝によるイリュージョンショーでした。この体験は、彼の人生を大きく変えるものでした。高木は1952年に慶応義塾大学の経済学部を卒業し、その後1954年には法学部を卒業しました。卒業後は衆院事務局参事として働きましたが、さらなるキャリアの発展を目指し、国立国会図書館での職務に就きました。

日本の奇術界への貢献

1950年代から1960年代にかけて、日本の奇術界は限られた情報源の中で成長していきました。高木は、この時期に日本国外の奇術に関する書籍や雑誌が十分に流通していないことを痛感し、積極的に専門書の翻訳や解説書の執筆を行うことで、日本の奇術界に際立った貢献をしました。特に、専門季刊雑誌『奇術研究』を通じてクロースアップ・マジックの紹介を行ったことは、多くのマジシャンにとって貴重な資料となりました。

組織活動と受賞歴

高木は日本奇術連盟の副会長や、日本催眠学会の理事（後に副会長）を務めたほか、日本推理作家協会の会員としても活動しました。彼の業績が評価され、緒方奇術賞を受賞するなど、数々の賞も獲得しました。1985年にはアメリカのアカデミー・オブ・マジックからスペシャル・フェローシップを受賞し、その国際的な評価も高まりました。

著作について

高木の著作は、奇術に関するものが主でありながらも、パズルやゲームに関する作品も手掛けています。彼の総著作数は80を超え、多岐にわたる内容が収められています。代表的な著作には『カードマジック事典』（1983年、東京堂出版）、『魔法の心理学』（1985年、講談社）、『トリックの心理学』（1986年、講談社）、『コインマジック事典』（1986年、東京堂出版）などがあり、これらは後の奇術家たちにとってのバイブルともいえる重要な文献です。

特に、1987年に出版した『奇術入門シリーズ』は、カードマジックやロープマジックの基礎を学ぶための貴重なガイドとして、多くの人々に親しまれています。また、彼の影響は、思考技術や心理学に基づいた奇術の理解にも及びました。これにより、高木は多くの後進のマジシャンにインスピレーションを与え続けました。

晩年と死去

高木重朗は1991年1月7日に心不全によりこの世を去りました。その死は、彼の業績を評価していた多くの人々にとって衝撃的なものであり、日本の奇術界は彼の偉業を引き継ぐべく努力を続けています。高木の貢献は、今なお多くのマジックファンや新しい世代のマジシャンに受け継がれ、彼の著作は奇術の学びや実践において欠かせない資料として重宝されています。

もう一度検索