高校授業料無償化・就学支援金支給制度

高校授業料無償化・就学支援金支給制度について

高校授業料無償化・就学支援金支給制度は、2010年度から日本で実施されている、高等学校等における教育費の負担を軽減するための制度です。

制度の概要

この制度は、公立高校の授業料を無償化し、私立高校等に通う生徒には就学支援金を支給することで、授業料負担を軽減することを目的としています。対象となるのは、高等学校、中等教育学校後期課程、特別支援学校高等部、専修学校高等課程、各種学校の高校相当課程、および高等専門学校の第1学年から第3学年までの生徒・学生です。

授業料の無償化と就学支援金

- 公立高校の場合: 授業料相当額が国から自治体に支給されるため、実質的に授業料は無償となります。例えば、全日制高校では年額11万8800円、定時制高校では年額3万2400円、通信制高校では年額6200円が目安です。
- 私立高校等の場合: 保護者の所得に応じて、就学支援金が国から学校設置者（学校法人など）に支給されます。年収250万円未満の世帯には最大23万7600円、250～350万円程度の世帯には17万8200円が支給され、授業料負担が軽減されます。

所得基準と注意点

所得は支給額の基準となりますが、預貯金や借入金の額は考慮されません。また、私立高校の場合、課程による支給額の差はなく、定時制・通信制でも全日制と同じ金額が支給されます。

類似制度との違い

義務教育費国庫負担制度は、公立学校の授業料を国が負担する制度ですが、私立学校への授業料給付はありません。一方、本制度は私立学校にも一部相当額が支給される点が異なります。私学助成金は、これらの制度とは別に行われています。

外国人学校の扱い

当初、外国人学校も制度の対象でしたが、朝鮮学校については、北朝鮮との関係が懸念され、2013年に対象から除外されました。これにより、朝鮮学校への就学支援金の支給は行われなくなりました。

対象となる在学者

年齢や国籍による制限はありませんが、無償となる期間は基本的に修業年限に準じます。留年した場合は、その期間は有償となる場合があります。ただし、公立高校の修業年限を超えた場合の授業料は自治体の負担となり、対応は地域によって異なります。

導入前後の比較

この制度は授業料のみを対象とするため、修学旅行などの諸費用や私立学校の入学金などは別途必要です。制度導入前は、平均的な学校教育費は公立で34万4千円、私立で78万5千円でしたが、導入後はそれぞれ12万円～24万円程度減額されることになります。

導入効果

制度導入後、高校進学率が向上し、経済的理由による私立高校の中退者が減少しました。これは、経済状況に関わらず、より多くの生徒が教育機会を得られるようになったことを示しています。

国の負担

この制度にかかる費用は一般会計で扱われ、平成24年度の当初予算額は約3960億円でした。内訳としては、公立高校授業料不徴収交付金が約2380億円、就学支援金交付金が約1577億円となっています。

地方自治体の取り組み

一部の地方自治体では、国の制度に上乗せして、私立高校の無償化を進める動きがあります。例えば、大阪府では所得制限付きで私立高校の授業料を無償化し、京都府も同様の方針を打ち出しています。また、佐賀県では、修業年限を超えた生徒に対しても、一定の条件を満たせば無償化の対象としています。

法案成立までの経緯

この制度は、国際人権規約に則り、高校・大学等の学費無償化を求める動きから生まれました。当初、私立学校への支援は憲法や私学助成制度の問題から困難とされていましたが、給付対象を生徒ではなく学校にすることで、法的なハードルをクリアしました。制度導入前には、保護者への直接給付も検討されましたが、最終的に自治体を通じて学校に支給される方式に決定しました。

その他

教育関係者からは、義務教育における給食費などの諸費用も含めた完全無償化を求める声も上がっています。また、制度が導入されるまでには、多くの議論や法案提出、修正を経て、長年の悲願が実現しました。

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