高校生首切り殺人事件

高校生首切り殺人事件

1969年4月23日、神奈川県で発生した高校生首切り殺人事件は、少年犯罪史に残る凄惨な事件として知られています。

事件の概要

サレジオ高等学校に通う男子生徒Aは、同級生の男子生徒Bと共に山へ向かいました。Aは2日前に盗んだ登山ナイフをBに見せますが、Bは特に驚く様子もなく、「お前の顔は豚に似ているな」と発言します。この言葉をきっかけに、AはこれまでBから受けてきた数々のいじめを思い出し、抑えきれない憎悪に駆られました。

Aは衝動的にナイフでBを刺し、Bが倒れると、仕返しを恐れたAは無我夢中でBの首を切断しました。犯行後、Aは自身の罪を隠蔽するため、左肩をナイフで2回切りつけ、不良に襲われたと偽装工作を行います。凶器のナイフは現場近くの土中に埋め、通りかかった人に「3人の不良に襲われ、友達が殺された」と嘘の証言をしました。

事件から2日後の4月25日、Aは警察の取り調べを受けます。当初は否認を続けていたAでしたが、巡査部長らに矛盾点を指摘され、午後6時15分にB殺害を自供しました。

事件後

Aは初等少年院を出所後、進学して大学院を修了し、弁護士の資格を取得しました。事件の発覚後には、養子縁組によって氏名を変更しています。一方、被害者Bの遺族は深い精神的な傷を負い、家庭崩壊寸前の状態に陥りました。

Aの父親はBの遺族に対し、和解金として720万円を毎月2万円ずつ支払うという内容の示談書を交わしました。しかし、40万円ほどを支払った後、支払いは滞り、1998年にAの父親が死亡した際には、680万円が未払いのままでした。

2006年、事件を取材した奥野修司が著書『心にナイフをしのばせて』を出版し、ノンフィクションとしては異例の8万部を超えるベストセラーとなりました。しかし、この本の出版後、Aの個人情報がインターネット上に流出するという事態も発生しました。同年10月、Aは遺族に謝罪の手紙を送り、残された和解金を支払う意思を伝え、直接会って謝罪したいという意向を示しました。しかしその後、Aは弁護士を廃業し、遺族との連絡は途絶えてしまいました。

『心にナイフをしのばせて』への批判

少年犯罪データベースを主宰する管賀江留郎は、奥野修司の著書『心にナイフをしのばせて』について、精神鑑定書の引用方法が恣意的であると批判しています。管賀は、書籍内で少年に対するいじめが存在しなかったかのように記述されている点や、鑑定書の一部のみを引用することで少年を怪物に見せようとする意図があるのではないかと指摘しました。そして、「一方の側に立って精神鑑定書の都合のいいところだけを出すようなやり方で」、刑期を終えて以降罪を犯していない個人を糾弾すべきではないと主張しています。

関連項目

奥野修司 - 『心にナイフをしのばせて』著者
神戸連続児童殺傷事件 - 少年犯罪史に残る残忍な事件として、本事件と対比されることがあります。

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