高橋貞二

高橋貞二：松竹大船のスターの軌跡と悲劇的な最期

高橋貞二（たかはし ていじ、1926年10月20日 - 1959年11月3日）は、日本の俳優として、1940年代後半から1950年代にかけて活躍しました。愛称は貞ちゃん。東京都葛飾区出身で、日本映画学校卒業後、1945年に松竹に入社。

1946年の映画『物交交響楽』でデビューすると、佐田啓二、鶴田浩二らと共に「松竹大船の三羽烏」と呼ばれ、数々の映画作品に出演。青春映画から時代劇まで幅広い役柄をこなし、その演技力で多くの観客を魅了しました。松竹映画黄金期を代表するスターの一人として、その名を知らしめました。

彼の出演作品は実に多岐に渡り、松竹作品を中心に、小津安二郎、木下惠介といった巨匠監督の作品にも数多く出演しています。代表作として挙げられるのは、『大学の虎』『楢山節考』『東京暮色』『早春』など。これらの作品では、現代劇、時代劇、そしてホームドラマなど、多彩な役柄を見事に演じ分けている様子がうかがえます。共演者も、美空ひばり、淡島千景、岸惠子、草笛光子、岡田茉莉子、中村勘三郎(18代目)など、錚々たる顔ぶれです。

私生活では、1959年2月に結婚。しかし、その年の11月3日、わずか33歳という若さで、横浜市内で飲酒運転による交通事故で亡くなりました。運転していたのはメルセデス・ベンツ300Sクーペ。横浜市電と衝突し、帰らぬ人となりました。

この事故には、作家・黒岩松次郎（後の団鬼六）が関与しそうだったという逸話も残されています。実は、事故当日、黒岩は高橋らと酒を飲む約束をしていたものの、昼間に始めた将棋の約束を優先。そのため、予定時刻に遅れて酒席に参加せず、結果的に事故を免れることとなりました。

事故の衝撃は大きく、日本の映画界に大きな悲しみをもたらしました。彼の死後、妻は悲しみに暮れ、1962年にガス自殺で命を絶っています。現在、二人は東京都港区の青山霊園に眠っています。

高橋貞二の短い生涯は、輝かしい活躍と突然の悲劇によって彩られています。彼の残した多くの作品は、今もなお多くの人々を魅了し続けています。若くして亡くなった彼の才能と、その人生のドラマは、後世に語り継がれるべきものです。彼の名は、松竹大船黄金時代を象徴するスターとして、日本の映画史に刻まれています。

主な出演作品（抜粋）

物交交響楽 (1946)
若き日の血は燃えて (1947)
弥次喜多凸凹道中 (1948)
銀座新地図 (1948)
日本の悲劇 (1953)
早春 (1956)
東京暮色 (1957)
楢山節考 (1958)
彼岸花 (1958)
今日もまたかくてありなん (1959)
三羽烏三代記 (1959) ※遺作

関連書籍

「松竹大船撮影所覚え書　小津安二郎監督との日々」（山内静夫著、かまくら春秋社）

この本には、高橋貞二と親交の深かった山内静夫による、当時の様子や高橋との思い出などが記されています。

高橋貞二の短い生涯は、日本の映画史に大きな足跡を残しました。彼の輝かしい活躍と悲劇的な最期は、これからも多くの人々を感動させ、記憶に留め続けられることでしょう。

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