かまくら春秋社

かまくら春秋社

かまくら春秋社は、1970年に伊藤玄二郎によって創業された、神奈川県鎌倉市に本社を置く出版社です。月刊タウン誌『かまくら春秋』をはじめ、季刊誌『星座』、季刊文芸雑誌『詩とファンタジー』などの定期刊行物を発行しています。また、「鎌倉叢書」などの書籍や自費出版も手がけており、小規模ながらも鎌倉の文化に深く根ざした出版活動を展開しています。

創業と発展

創業者の伊藤玄二郎は、河出書房の編集者を経て独立。作家の里見弴の勧めが創業のきっかけとなりました。1972年からは書籍出版も開始し、1973年には法人化。『かまくら春秋』は第三種郵便物認可を受け、順調に成長を遂げました。2007年には鎌倉市小町に本社ビルを建設し、現在に至ります。節目ごとに創立・創刊記念の会を開催しており、2012年には『かまくら春秋』創刊500号を記念した展示会を鎌倉芸術館で実施しました。

定期刊行物

『かまくら春秋』
1970年創刊の月刊タウン誌です。鎌倉・藤沢・逗子・葉山など湘南地域一帯の話題を中心に、随筆や小説を掲載しています。1989年にはNTTタウン誌大賞を受賞。地域密着型の情報誌として、30代以上の中高年層に支持されています。小林秀雄、里見弴、堀口大學など、鎌倉在住の著名な作家や学者が寄稿しています。

『湘南文學』
1994年に創刊された文芸と福祉をテーマとする季刊誌です。同名の雑誌が湘南短期大学（神奈川歯科大学）から発行されていましたが、制作上の対立から分裂。裁判にまで発展しました。結果的に、同大学が雑誌名の商標権を保持していると判断され、かまくら春秋社は自社で『湘南文學』を継続発行することになりました。

『詩とファンタジー』
2007年創刊の季刊文芸誌です。読者から投稿された詩やイラストを中心に構成されており、宇野亜喜良や三木卓などの著名な作家も寄稿しています。やなせたかしが責任編集を務め、「やなせたかし賞」を誌内で創設しました。

発行書籍

『花喰鳥』
1984年出版の尼僧・高岡智照の自伝です。出版後、内容をめぐって名誉毀損の訴訟に発展しましたが、後に和解しています。著作権をめぐる問題にも発展し、その判例は注目を集めました。

『天国の本屋』
2000年出版の松久淳と田中渉による小説です。発売当初はあまり売れませんでしたが、書店員の口コミで広まり、ベストセラーとなりました。映画化もされています。

『氷川丸ものがたり』
2015年出版の、かまくら春秋社社長・伊藤玄二郎による貨客船・病院船であった氷川丸を題材とした書籍です。過去の書籍を改題・加筆・合本したもので、住田正一海事史奨励賞を受賞しています。アニメーション映画化もされました。

その他

かまくら春秋社は、地方・小出版流通センターを通じて全国に販路を持っています。また、首都圏出版人懇談会の創設時メンバーであり、鎌倉市観光協会会員、鎌倉市広報メディアセンター登録社でもあります。

本社ビルは、鎌倉市小町に位置する「かまくら春秋スクエア」の4階にあります。このビルは、鎌倉市の一時避難施設にも指定されています。

小規模ながらも、地域文化の担い手として、出版活動を通じて鎌倉の魅力を発信し続けています。

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