高橋貞子 (作家)

高橋貞子

高橋貞子（たかはし さだこ、1926年8月27日 - 2017年5月または6月）は、岩手県岩泉町出身の作家であり、長年にわたり地域に根ざした民話の収集・研究に尽力した民話収集家です。彼女の業績は、岩手県の地域文化を豊かにし、貴重な民俗資料として高く評価されています。

生涯

1926年、高橋貞子は岩手県下閉伊郡岩泉町岩泉乙茂に生まれました。幼少期は、両親や祖父母から語られる多くの昔話を聞いて育ち、物語の世界に親しみました。1944年3月には岩手県立盛岡高等女学校（現・岩手県立盛岡第二高等学校）を卒業し、同年4月より岩手県庁地方課に勤務しました。

結婚後、母親として子宝に恵まれたことを機に、幼少期に聞いた昔話や、周囲の人々からの昔話の採集を本格的に開始します。岩手県庁勤務時代には、郷土史家・平野直の勧めを受け、1977年に昔話集『火っこをたんもうれ』を出版。この出版をきっかけに、IBC岩手放送のラジオ番組で昔話の語りを始め、視聴者からさらに多くの昔話が集まるようになりました。以来、亡くなるまで長年にわたって岩泉町の民話の聞き書きを続けました。

高橋貞子の活動は、民話の伝承と普及に大きく貢献しました。その功績が認められ、1994年に岩手県教育委員会文化表彰、1995年に岩泉町町勢功労者表彰、1999年に文部大臣表彰 地域文化功労者、2006年に岩泉町合併50周年文化功労者表彰など、数々の賞を受賞しています。

著作

高橋貞子は、数多くの著作を通じて、岩泉町の民話や文化を世に広めました。代表的な著書には、以下のようなものがあります。

『火っこをたんもうれ―岩泉の昔ばなし』（1977年）
『まわりまわりのめんどすこ―続・岩泉の昔ばなし』（1978年）
『昔なむし―岩泉の昔ばなし』（1991年）
『河童を見た人びと』（1996年、2003年増補新版）
『白蕪っ子 : 岩泉の昔ばなし』（2001年）
『座敷わらしを見た人びと』（2003年）
『山神を見た人びと―岩手岩泉物語』（2009年）

これらの著作は、岩泉町に伝わる多様な民話を記録し、後世に伝える上で重要な役割を果たしています。特に『座敷わらしを見た人びと』は、半世紀をかけて集められた50件以上の聞き取り調査を基にしており、國學院大學の野村純一教授から「学術的にも看過し難い 新資料の提示」と高く評価されました。

また、高橋貞子は、歌集や句集も発表しており、豊かな感性と表現力で、岩泉の自然や人々の暮らしを表現しました。

歌集『絹滴』（2001年）
* 句集『桐は実に』（2001年）

評価

高橋貞子の業績は、地域文化の振興に大きく貢献したとして、多方面から高く評価されています。彼女の著作は、民話研究者や地域文化に関心のある人々にとって貴重な資料となっており、今後も読み継がれていくことでしょう。

岩手日報の書評では、長年にわたり集められた詳細な聞き取り調査に基づいた『座敷わらしを見た人びと』が、学術的にも貴重な資料として紹介され、國學院大學の野村純一教授からも注目されています。また、口承文芸研究でも、この書籍が五十戸を超える旧家の座敷わらしに関する証言集として、資料的価値が高いと評価されています。

高橋貞子は、まさに岩泉町の文化の語り部であり、彼女の残した足跡は、今後も地域の人々に大切にされていくでしょう。

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