高瀬一樹

高瀬 一樹（たかせ かずき）について

高瀬一樹は、1959年9月8日生まれの日本の演出家で、東京都で育ちました。彼は歌舞伎俳優の坂東調右衛門の孫として生まれ、演劇の道を志す環境の中で成長しました。父は演出家の高瀬精一郎、弟は歌舞伎役者の二代目中村扇乃丞という家族構成も、彼の演劇に対する情熱を深める要因となりました。

高瀬は5歳の時に、幸田露伴の小説から舞台化された『五重の塔』で華やかに初舞台を飾りました。その後も『勧進帳』や『新門辰五郎』、さらには『佐倉義民伝』に続けて出演し、幼少期から舞台経験を積んでいきました。都立大学からニューヨーク・シティーカレッジへ進学し、パフォーミング・アーツ・プログラムを1986年に修了したことが、彼の国際的なキャリアの礎を築くことになります。

彼の活動はオフ・オフ・ブロードウェイの舞台から始まり、日本の劇場でも数々の作品に出演しました。特に木下順二の『子午線の祀り』やルイーズ・ペイジの『サロニカ』では主演し、翻訳も手がけました。また、アンジェイ・ワイダによる演出の『山椒太夫』やロバート・ウィルソンの作品『T.S.E.』、『スキンミート・アンド・ボーンズ』に関わることで、1990年代にはウィーン演劇祭やシベリーナ演劇祭にも参加しています。

1997年にはニューヨークにて、NPOシアター・ジャパン・プロダクションを設立。この団体は日本の演劇を海外に紹介することを目的としており、彼の国際的な活動を強化する基盤となりました。さらに、2018年には国分寺市と小平市で独自のメソッドを用いた英語指導を行うE-JAM Studioを設立しました。ここではニューヨークの演劇学校のオンラインレッスンも提供し、舞台芸術の国際交流を促進しています。

高瀬の経歴の中で特に注目すべきは、1998年に歌舞伎俳優の嵐橘三郎をニューヨークに招き、歌舞伎のワークショップを主催したことです。さらに、コロンビア大学やコーネル大学などでの講義やデモンストレーションも行い、彼の専門知識を広めました。1999年にはオリジナル作品「景清拘留」をラ・ママ実験演劇センターで演出し、日英バイリンガルの実験的なプロダクションを披露。これは後に、日本のキャストを含めた再演が東京のシアターXで行われ、国際的なコラボレーションのひとつとなりました。

2000年代以降も高瀬は活発に活動を続け、数多くの演出を手掛けています。2006年にはマイク・リーの作品「エクスタシー」を演出し、2007年にはサラ・ケインの「フェードラの恋」の演出を担当。彼の作品には、新たな視点や考え方が盛り込まれており、観客に深い印象を与えています。また、ハロルド・ピンターの作品にも携わるなど、国際的な作品においてもその手腕を発揮しました。

高瀬一樹は、日本の伝統的な演劇と現代の演劇を融合させ、国際的な舞台での活動を通じて演劇界に新たな風を吹き込む存在です。彼の貢献は、今後も演劇の発展に大きな影響を与えていくことでしょう。

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