高知県交通

高知県交通株式会社：四国を駆け抜けたバス事業者の軌跡

高知県交通株式会社は、高知県を拠点としてバス事業を展開していた企業です。その歴史は長く、四国地方最大のバス事業者として、東西約300kmにわたる広大な路線網を誇っていました。徳島県の牟岐から、高知県南部の足摺岬、宿毛、大月町柏島までを結ぶ路線網は、同社の規模の大きさを示すものです。

1990年代以降の地域分社化によって営業エリアは縮小されましたが、それでも高知市と檮原町を結ぶ長距離路線を運行するなど、県内交通を支える重要な役割を担っていました。

高知県交通は、四国のバス事業者としては初めて高速バス事業に進出したパイオニアでもあります。当初は県内路線のみでしたが、1990年には阪急バス、土佐電気鉄道との共同運行で大阪線を開設、その後も東京や福岡に至る長距離路線を開拓し、大規模な高速バスネットワークを構築しました。貸切バス事業でも高いシェアを維持し、県内のイベントや観光輸送を支えていました。

2009年には、土佐電気鉄道と共同で、電車とバスで利用できる交通系ICカード「ですか」を導入。地域における交通利便性の向上に貢献しました。

設立から統合、そして消滅まで

高知県交通は、1944年、野村産業株式会社のバス部門を独立させる形で設立されました。戦後、高知市内で事業を拡大し、桂浜有料道路の開通（1957年）など、地域開発にも貢献しました。しかし、1971年には経営破綻し、会社更生法の適用を申請する事態に陥りました。その後、自主再建を果たしましたが、厳しい経営環境が続きました。

2000年代には、土佐電気鉄道との共同運行で高知市中心部を巡回する「よさこいぐるりんバス」を運行開始しましたが、利用客低迷のため2011年に運行休止となりました。

そして、2014年、土佐電気鉄道、土佐電ドリームサービスとの経営統合により、「とさでん交通株式会社」が発足し、高知県交通は歴史に幕を閉じました。2018年には特別清算を終結し、法人格も消滅しました。

多様な路線と車両

高知県交通は、数多くの路線を運行していました。都市間路線では、東京、名古屋、京都、大阪、神戸、岡山、広島、徳島、高松、松山、福岡などを結ぶ高速バスを運行。これらの路線は、他社との共同運行が多かったことが特徴です。

車両においては、四国のバス会社では珍しい日産ディーゼル車（現UDトラックス）を多く導入。西日本車体工業、富士重工製の車体を採用していました。また、独自の土佐犬をモチーフにしたエンブレムは、県内外で広く知られていました。

1977年には日本で初めて国産スケルトン観光バスを導入するなど、常に新しい技術を取り入れ、時代の変化に対応しようと努力していました。

グループ会社

高知県交通は、グループ会社を傘下に収め、県内各地の交通事業を支えていました。県交北部交通、嶺北観光自動車、高知高陵交通、高南観光自動車（現：四万十交通）、高知西南交通、高知東部交通など、地域密着型のバス会社が、それぞれ異なるエリアで路線を運行していました。

これらのグループ会社も、高知県交通の統合に伴い、とさでん交通に吸収合併されたり、事業を継承する形で存続したりしています。

高知県交通の遺産

高知県交通は、経営統合により姿を消しましたが、その歴史と功績は、高知県の交通史に深く刻まれています。長きにわたる地域貢献、そして高速バス事業における先駆的な取り組みは、後世に語り継がれるべきものです。とさでん交通は、高知県交通の事業を継承し、新たな時代へと歩みを進めています。その発展とともに、高知県交通の遺産は、今後も大切に守られていくことでしょう。

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