高等文官試験

高等文官試験について

高等文官試験（こうとうぶんかんしけん）は、1894年から1948年まで日本で実施されていた高級官僚の採用試験です。この試験は、正式には「高等試験」と呼ばれており、その前は「文官高等試験」として知られていました。しかし、多くの場合は「高文（こうぶん）」や「高文試験」と略されています。特に、日本の統治下にあった朝鮮や台湾出身者も日本国籍を持っていれば受験でき、多くの官僚がこの試験を通じて登用されました。

歴史的背景

高等文官試験の原型は、1887年に制定された「文官試験試補及見習規則」にさかのぼります。当初、この試験は高等試験と普通試験の2つから成り、高等試験は奏任官、普通試験は判任官の登用を目的としていました。1893年には「文官任用令」が制定され、これにより「文官高等試験」が施行されました。さらに、1899年には同令が改正され、勅任官の政治任用が廃止されました。

1948年にこの試験は廃止されましたが、その後は人事院が実施する国家公務員試験が高文行政科を継承し、法務省が行う司法試験が高文司法科としての役割を担うようになりました。現在では、国家公務員試験の総合職試験が高文行政科の後継にあたります。

試験の内容

高等文官試験の受験資格は、中等学校卒業程度と定められており、予備試験は筆記によるものでした。この予備試験を通過した者は、以降の試験において優遇されました。主な試験科目には行政科、外交科、司法科が含まれます。

行政科

行政科の筆記試験は、憲法、行政法、民法、経済学が必須科目であり、選択科目には哲学や社会学、政治学など多岐にわたる分野があります。合格者は口述試験を通過することで高級官僚への道を開かれました。

外交科

外交科では、憲法、国際公法、経済学が必須科目として取り扱われ、そのほか各種歴史や法律に関する選択科目を受ける必要があります。特に、外国語試験も重要な要素として位置づけられています。

司法科

司法科は、憲法、民法、商法、刑法などが必須科目にあり、選択科目も豊富です。多くの受験者がこの科目に挑戦し、合格者には高い地位が与えられました。

及第者の例

高等文官試験からは多くの優れた人材が輩出されました。首席合格者としては、若槻禮次郎や後藤文夫、平岡梓といった著名な官僚が名を連ねています。また、朝鮮や台湾出身者も合格者として記録されていることから、この試験は広い範囲での人材育成に寄与していたことがわかります。

現代への影響

2018年の時点では、国家公務員試験の総合職試験が高文行政科の系譜を継いでいます。現在の不平等を回避するため、多くの試験では高文の受験資格を持つ者に優遇措置が与えられています。かつての高等文官試験は、日本の高級官僚制の歴史において重要な役割を果たし、その影響は現在にも色濃く残っています。

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