高等警察

高等警察とは

高等警察は、大日本帝国憲法下の日本において、反政府的な政治運動を取り締まる目的で設置された警察組織です。この名称は、ドイツの行政法学用語を翻訳したもので、一般的な警察活動を行う「普通警察」とは区別されます。

概要

高等警察は、社会の安定を脅かす可能性のある騒乱を未然に防ぐことを主な役割としていました。政府は、讒謗律、新聞紙条例、集会条例などの法律を制定し、自由民権運動をはじめとする社会運動への監視と取り締まりを強化しました。高等警察はこれらの法律を執行する機関として活動しました。

1889年に大日本帝国憲法が発布され、翌年には帝国議会が開設されましたが、高等警察は初期の段階から選挙への大規模な干渉を行い、世論からの強い批判を浴びました。この事件の責任を取り、当時の内務大臣であった品川弥二郎は辞任することとなりました。

大正デモクラシーの時代に入ると、政党内閣が定着し、高等警察の活動は、野党の政治家の選挙違反を取り締まることに重点が置かれるようになりました。このため、高等警察を所管する内務省の動向は政治家にとって非常に重要な関心事となり、政権交代の度に、内務大臣だけでなく、次官、警保局長といった警察幹部、さらには末端の巡査までが頻繁に異動や更迭されるという事態も発生しました。

1936年の選挙粛正運動をきっかけに、高等警察は廃止され、その機能は情報課や部長書記室などに引き継がれ、敗戦まで存続しました。警視庁の政治警察課も、1905年に高等課に改称され、後に特別高等警察が分離した後は、1941年に情報課と改称し、終戦を迎えることとなります。

一方、外地では国政レベルでの選挙が実施されなかったため、特別高等警察への分離は行われず、「高等警察」の名称のまま組織が存続しました。

高等警察の主な活動

反政府的な政治運動の監視と取り締まり
社会運動に対する監視と取り締まり
選挙への干渉
政治家の選挙違反の取り締まり

高等警察は、日本の政治史において、大きな影響力を持った組織であり、その活動は、当時の社会情勢を反映したものでした。

関連事項

内務省警保局
警視庁
特別高等警察
公安警察

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