高野文彰

高野文彰（たかの ふみあき）

日本の著名な造園家であり、ランドスケープアーキテクトである高野文彰氏は、1944年に中国の天津で生を受けました。そのキャリアは、自然環境と人間活動が織りなす空間の創造に深く関わっています。

氏の学歴は、まず1966年に北海道大学農学部農学科を卒業したことから始まります。国内での基礎を築いた後、さらなる研鑽を積むべく渡米。アメリカ合衆国のジョージア大学環境デザイン学大学院に進学し、1971年に課程を修了します。大学院での研究成果は高く評価され、アメリカ合衆国造園学会より最優秀表彰を受ける栄誉に輝きました。この海外での学びは、その後の設計活動における国際的な視点や先進的な手法の導入に大きく寄与することとなります。

大学院修了後も、高野氏はアメリカ国内での実務経験を重ねます。1973年から1975年にかけて、ペンシルベニア州ピッツバーグにあるランドスケープデザイン事務所、シモンズ・アンド・シモンズUSAなどで修業。実際のプロジェクトに関わる中で、ランドスケープアーキテクトとしての技術と哲学を磨きました。

海外での研鑽を終え、1975年に帰国した高野氏は、自身の活動拠点となる高野ランドスケープ・プランニングを設立。ここから、日本国内での本格的な設計活動が始まります。設立当初からその才能は注目され、1980年には国営沖縄海洋博覧会記念公園内の「ちびっことりで」の設計で、日本造園学会デザイン部門賞を受賞。これは、氏の創造性が早くから認められた証と言えるでしょう。

高野氏の代表作は数多く、その活動範囲は全国各地、さらには海外にまで及んでいます。主な作品としては、遊び場や子ども向けの空間から大規模な公園、都市空間まで多岐にわたります。具体的には、国営滝野すずらん丘陵公園の「こどもの谷」、国営木曽三川公園の「大江川エリア」、国営越後丘陵公園の「躍動の広場区」、国営海の中道海浜公園の「サイクリングセンター」、国営昭和記念公園の「子供の森」などが挙げられます。また、海外ではマレーシアのシャーアラム中央公園タウンセンター、フランスのユーロアジアセンター日本庭園なども手掛けています。国内においても、横浜市新田緑道、気仙沼みなとのみえる丘公園、幕別町明野ヶ丘公園、十勝エコロジーパーク、帯広の森、丹後リゾート公園など、地域に根ざした多様なプロジェクトを実現させています。

特に注目すべきは、建築家集団である象設計集団との長年にわたる協働です。両者の連携からは、国営みちのく杜の湖畔公園やフランスのアルベール・カーン庭園、高橋建設社屋など、独創的で質の高い作品が生み出されています。象設計集団とは事務所を共有する関係性であった時期もあり、さらには共に十勝へ移住するなど、深い結びつきを持っています。十勝では、地元住民と共に夏と冬にワークキャンプ「十勝サーカス」を共催するなど、地域に根ざした活動も積極的に行っています。

また、台湾においても活動を展開しており、羅東運動公園以降は台湾事務所も開設。その活動範囲の広さを示しています。造園家としての顔だけでなく、馬術競技においても国民体育大会に出場し入賞経験を持つなど、多才な一面も持ち合わせています。

長年の功績が称えられ、2008年には第30回日本公園緑地協会北村賞を受賞。高野文彰氏の生み出すランドスケープは、機能性、芸術性、そして地域や自然との調和を追求し、日本のランドスケープデザインの発展に多大な貢献をしています。

参考文献

* 新世代のランドスケープアーキテクト Part1（マルモ出版、1996年）

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