高龍寺

国華山高龍寺（こうりゅうじ）

函館市船見町に静かに佇む国華山高龍寺は、曹洞宗に属する由緒ある寺院であり、函館市内に現存する寺院の中では最も長い歴史を持っています。その創建は江戸時代初期にまで遡り、激動の時代の波を乗り越えて現在に至ります。

歴史の歩み

高龍寺の始まりは、1633年（寛永10年）のことです。松前法源寺の僧侶であった盤室芳龍によって、当時渡島亀田郡亀田村、現在の函館市万代町や亀田町付近に創建されました。その後、寺は移転を重ね、1706年（宝永3年）には幸坂下へと場所を移しました。

寺の歴史の中で特筆すべきは、幕末に勃発した箱館戦争の影響です。1869年（明治2年）、戦乱の最中に旧幕府軍は高龍寺を箱館病院の分院として使用しましたが、同年5月11日（新暦6月20日）に発生した箱館総攻撃の際に、新政府軍の兵士によって負傷者が殺害され、さらに寺院全体に火が放たれてしまいました。この痛ましい出来事により、長年築き上げられてきた伽藍は焼失してしまいます。

戦争の傷跡が癒えた後、高龍寺は復興に向けて歩み始めました。1879年（明治12年）には現在の所在地である船見町への移転を果たし、再建が進められました。伽藍の整備は続けられ、1899年（明治32年）には現在の本堂が完成しました。さらに1911年（明治44年）には、東北地方以北では最大規模ともいわれる壮大な山門が建立され、寺の威容を一層際立たせています。

長い歴史の中で培われてきた価値が認められ、2012年（平成24年）には、本堂や山門を含む合計10棟の建造物が国の登録有形文化財に指定されました。

貴重な文化財と登録有形文化財

高龍寺は、多くの貴重な文化財を所蔵しています。中でも、江戸時代中期に活躍した松前藩の絵師、蠣崎波響（かきざきはきょう）の手による「釈迦涅槃図」は、彼の最高傑作の一つと称され、北海道の有形文化財にも指定されています。これは、寺が長い歴史の中で育んできた文化的な豊かさを示すものです。

また、境内に立つ建造物の多くも、歴史的価値を持つものとして評価されています。国の登録有形文化財となっているのは以下の10件です。

本堂
山門及び袖塀
位牌堂
開山堂
金毘羅堂
宝蔵
鐘楼
水盤舎
防火塀
土塀

これらの建築物は、寺の歴史を物語ると同時に、日本の伝統的な寺院建築の様式を今に伝える貴重な遺産です。特に、雄大な山門は高龍寺のシンボルとして知られています。

関連施設と伝承

高龍寺に関連する施設として、若松町に位置する高龍寺音羽ホールがあります。これはかつて延命地蔵堂として建てられた建物が基となっています。この延命地蔵堂の由来にはいくつかの説が伝えられています。一つは、旧・地蔵町（現在の豊川町付近）にあった旧家の敷地内にあったものを、土地とともに寄付されたという説です。また、「函館沿革史」には1795年（寛政7年）に高龍寺の末僧である豊眼によって建立されたと記されています。さらに、「箱館夜話草」（1857年）には、「鼻かけ地蔵」と呼ばれる地蔵に関する興味深い伝承が残されています。これは、お堂もない地蔵を子供たちが遊び半分で引きずり回した際に鼻が欠け、その後天然痘が流行して子供たちが亡くなった際に、誰かがその地蔵を墓所に安置したという話です。こうした多様な伝承が、延命地蔵堂（現在の音羽ホール）の歴史に彩りを添えています。

高龍寺には、達磨大師像も祀られており、信仰の対象となっています。

アクセス

高龍寺へのアクセスは比較的容易です。函館市電を利用する場合は、「函館どつく前」停留場から徒歩およそ10分です。バスを利用する場合は、函館バスの「高龍寺前」停留場で下車すると、徒歩約1分で到着します。

古都函館の歴史と共に歩み、多くの歴史的建造物や文化財を今に伝える高龍寺は、訪れる人々に深い感銘を与える場所です。静寂に包まれた境内で、函館の長い歴史に思いを馳せることができます。

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