髙田明

髙田 明

髙田 明（たかた あきら）氏は、1948年11月3日生まれの日本の実業家です。家電や雑貨などの通信販売事業を展開する「ジャパネットたかた」の創業者として、その独特な語り口によるテレビ・ラジオショッピングのMCとして全国的に有名になりました。長年にわたり同社の初代代表取締役社長を務めた後、Jリーグ所属のプロサッカークラブ「V・ファーレン長崎」の経営立て直しに尽力し、その代表取締役社長も務めました。現在は、個人事務所である株式会社A and Liveの代表取締役社長として活動しています。

生い立ちとキャリアの始まり

長崎県平戸市のカメラ店経営者の次男として誕生した高田氏は、幼少期を地元で過ごしました。平戸市立平戸小学校、同中学校を経て、長崎県立猶興館高等学校を卒業後、大阪経済大学経済学部へ進学。大学時代は熱心に英語を学び、この経験が後に電子辞書などの販売につながったと語っています。大学卒業後、京都府の産業用機械メーカーである阪村機械製作所に入社し、貿易部に配属。1972年からは約8ヶ月間、西ドイツ（当時）のデュッセルドルフに赴任し、海外でのビジネス経験を積みました。一度は翻訳会社設立を目指して退社しましたが、これは実現しませんでした。

「カメラのたかた」から独立へ

故郷の平戸に戻った高田氏は、1974年から実家の「カメラのたかた」を手伝うようになります。30歳で佐世保市に支店を出店し、独立への道を歩み始めました。そして1986年1月、「カメラのたかた」から独立する形で「株式会社たかた」を設立。設立当初から、カメラフィルムの即日現像・手渡しサービスなどを武器に事業を拡大。ビデオカメラの一般家庭への普及や、カラオケブームといった時代の波に乗り、ソニーやパイオニアの特約店として業績を伸ばしていきました。

ジャパネットたかたの飛躍

事業転換の大きなきっかけは1990年に訪れます。知人の紹介で長崎放送のラジオショッピング番組への出演依頼を受け、試験的にコンパクトカメラを販売したところ、わずか5分の放送で50台を完売。この経験から通信販売の可能性を確信し、本格的に参入することを決意します。1994年にはテレビショッピングを開始し、1999年には社名を現在の「ジャパネットたかた」に変更。2001年には自社制作による初の生放送テレビショッピングを実現させました。佐世保の本社に設けたスタジオから、社長自ら MC として出演。長崎訛りの甲高い独特な語り口で商品を魅力的に紹介するスタイルは、多くの視聴者の心を掴み、彼の存在とジャパネットたかたの名は全国に浸透していきました。

事業承継と新たな挑戦

ジャパネットたかたは2010年に過去最高の売上を記録しましたが、その後、テレビ販売の不振などから売上高が減少傾向に転じます。この状況に危機感を抱いた高田氏は、「覚悟の年」と位置付けた2013年度中に過去最高益を達成できなければ社長を退任することを公言しました。目標達成の目処が立った後も社長を務めましたが、長男である髙田旭人氏への事業承継を進め、2015年1月16日をもって代表取締役社長の座を旭人氏に譲りました。

社長退任後も、しばらくはジャパネットのショッピング番組にMCとして出演を続けましたが、徐々に講演活動へと軸足を移すため、個人事務所「A and Live」を設立します。その後も、ジャパネット関連の番組出演や、地方活性化の取り組み（九十九島特命宣伝部長など）に関わる一方、他局の様々な番組にも「元・通販会社社長」として出演し、その経験や経営哲学について語っています。特に、熊本地震発生時にはジャパネットの復興支援プロジェクトの一環として、再びテレビショッピングに出演し、支援を呼びかけたことでも知られています。

2017年4月には、経営危機に陥っていたJリーグクラブ「V・ファーレン長崎」の再建を託され、その運営会社の代表取締役社長に就任。ジャパネットホールディングスによる買収・子会社化を経て、債務超過の解消や選手の給与未払い問題の解決など、経営体質の強化とクラブ環境の改善に奔走しました。彼の情熱的な経営のもと、クラブは史上初のJ1昇格を達成。長崎駅近くでのサッカー専用スタジアム建設を含む再開発計画にも着手するなど、大きな足跡を残しました。就任から約3年後の2020年1月1日をもって、後任に長女の髙田春奈氏を据え、社長職を退任しましたが、その後も「サッカー夢大使」としてクラブを支援しています。

人物像と特徴

高田氏の最大のトレードマークは、テレビショッピングで見せる甲高く、長崎北部の方言訛りを含んだ独特の語り口です。特に「ソニー」などの発音の訛りはよく知られており、多くのものまねタレントの十八番ネタにもなっています。ただし、これはあくまでテレビ出演時の「スイッチ」であり、普段は低い声で話すため、ギャップに驚かれることも多いといいます。その声に含まれる特定の周波数が犬にとって聞き取りやすいことから、テレビ画面の高田氏に犬が反応するというエピソードも生まれました。また、カラオケが得意で、ショッピング番組で高得点を叩き出す歌唱力も披露しています。 V・ファーレン長崎の社長時代には、「J1」を「ゼイワン」、「V・ファーレン」を「ビハーレン」と訛る愛嬌ある語り口でサポーターに親しまれました。経営哲学や伝え方の極意を語る一方で、地元の長崎の被爆地としての歴史を踏まえ、護憲や核兵器禁止条約への支持を表明するなど、社会的な発言も行っています。

主な受賞歴

第34回 企業広報賞（企業広報経営者賞）（2018年）
第7回 全広連日本宣伝賞（正力賞）（2019年）

主な著書

『賢人の習慣術』（共著）（2012年）
『賢人のビジネスリーダー力』（共著）（2012年）
『伝えることから始めよう』（2017年）
『90秒にかけた男』（2017年）
『まかせる力』（共著）（2018年）
『髙田明と読む世阿弥:昨日の自分を超えていく』（監修）（2018年）

多岐にわたる活動を通じて、高田氏は単なる経営者にとどまらず、強い「伝える力」を持つ稀有な存在として、多くの人々に影響を与え続けています。

もう一度検索