鬼婆 (映画)

映画『鬼婆』について

『鬼婆』は、1964年に公開された日本のホラー映画で、新藤兼人が監督を務めました。この作品は、仏教の説話を元にしており、14世紀の日本の田舎村を舞台にした物語になっています。主なキャストには、乙羽信子と吉村実子が名を連ねており、彼女たちが演じるのは、通りかかった侍を殺し、その持ち物を奪ってから遺体を深い穴に捨てる女とその義理の娘という過酷な役回りです。

映画の制作背景

撮影は千葉県栄町にある印旛沼の葦ヶ原にプレハブ小屋を建て、スタッフ全員が約3か月にわたって合宿しながら行われました。乙羽信子は全裸での演技にも挑み、非常に体当たりな演技で観客を引きつけました。このシーンでは、彼女の陰毛までフィルムに映り込むという出来事がありました。監督の新藤は「猥褻ではない」としてカットを拒否したものの、最終的には編集でカットされたとされています。映画の題字は岡本太郎が手がけたもので、視覚的なインパクトを与えています。

あらすじ

物語は南北朝時代を背景に展開します。戦の激化により、男手を失った姑と嫁の二人は、殺した落武者から武具を奪ってそれを売ることで生活を支えていました。しかし、嫁は戦場から戻った若い男との逢引を重ねるようになり、それを恐れた姑は仏の罰が当たると嫁を脅かしますが、その脅しは効果をなさず、関係は続いてしまいます。

姑は嫁を引き戻すために、落武者から奪った般若面をかけて夜道で脅すことにしました。ある嵐の夜、般若面をつけた姑には異変が起き、物語は新たな展開を迎えることになります。彼女がどのようにして嫁との関係や自身の運命に立ち向かうのかを描くこの映画は、視聴者を引き込むサスペンスと恐怖を巧みに組み合わせています。

キャスト

• - 中年女：乙羽信子
• - 若い女：吉村実子
• - 八：佐藤慶
• - 牛：殿山泰司
• - 鬼面の武将：宇野重吉
• - 落武者：松本染升
• - 落武者：加地健太郎
• - 老婆：田中筆子

また、映画の中には湊川の戦いに関するシーンもあり、過去の戦乱が如何に人々の生活に影響を与えたのかを想像させる要素も含まれています。『鬼婆』は、心理的恐怖と社会的なテーマが絡まり合った作品として多くの映画ファンから支持され、スティーヴン・ジェイ・シュナイダーの著書『死ぬまでに観たい映画1001本』にも掲載されています。観る者に深い思索を促すこの映画は、単なるホラー作品に留まらない、豊かな表現力を持った作品です。

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