鬼畜 (松本清張)

概要

『鬼畜』は松本清張による短編小説で、1957年4月に『別冊文藝春秋』に掲載され、その後『詐者の舟板』に収められました。この作品は実話をもとにしており、検事の河井信太郎の証言が参考にされています。作品全体を通じて、家族の絆や愛情、絶望的な状況に追い込まれた人間の心理が描かれています。

あらすじ

物語は、東京から急行列車で3時間の地方で、小さな印刷屋を経営する32歳の竹中宗吉が主人公です。彼は貧しいながらも妻のお梅と静かな生活を送っていました。しかし、商売がうまくいっているとき、彼は料理屋の女中・菊代に惹かれ始めます。彼は菊代と関係を持ち、3人の子どもをもうけます。

宗吉は、一時的に自分の地位や家庭に充実感を感じますが、時が経つにつれて近代的な印刷会社の進出や火事によって商売は零落してしまいます。生活が困窮するなか、菊代は自らの子どもたちを連れて宗吉の家に押しかけ、お梅に事態が知られることになります。お梅はこの状況に激怒し、菊代と宗吉を責め立てます。

結果的に、宗吉は自分の家庭に亀裂が入ってしまい、3人の子どもたちが不幸な目に遭います。弟は病死し、妹は行方不明になり、兄は命を狙われることになります。宗吉は絶望の淵に立たされ、家庭の崩壊を目の当たりにします。

映画化およびドラマ化

この小説は1978年に松竹で映画化され、主演には岩下志麻と緒形拳が選ばれました。映画は『The Demon』と題して海外でも配信され、評価も高かったです。さらに、2002年と2017年にはテレビドラマ化され、原作の深いテーマを踏襲しながら新たな視点で描かれています。

映画の特徴としては、兄弟の愛情と父親の葛藤が焦点となっており、特にラストシーンでは利一が父を拒絶する場面が多くの観客に印象を与えました。

脚本と演出

映画版とドラマ版の両方において、松本清張の持つ作品の深淵な人間探求が生かされています。特に監督や脚本家は、作品の持つテーマをより鮮明にするために演出に工夫を凝らしました。例えば、映画版では岩下志麻がどのように役を演じるかに慎重に取り組み、現実の子どもたちとの関係を徹底的に作り込んでいました。

結論

『鬼畜』は、松本清張が描く人間の弱さと家族の愛情への問いかけであり、長年にわたって多くの人々に感動を与えてきた作品です。映画やドラマとしての展開もされ、作品のテーマは時代を超えて今なお色あせることなく、多くの読者や視聴者の心に深く残っています。

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