鬼頭莫宏

鬼頭莫宏：繊細なタッチで描く、深淵なるSF世界

鬼頭莫宏（きとう もひろ）は、1966年8月18日生まれ、愛知県出身の漫画家、イラストレーターです。名古屋工業大学工学部を卒業後、一度は会社員生活を送りますが、漫画家としての道を志し、きくち正太のアシスタントを経て、1995年に『月刊アフタヌーン』で再デビューを果たしました。彼の作品は、華奢な人物造形と、少年少女を主人公としたシリアスで陰鬱なSFストーリーが特徴です。

生い立ちと初期の活動

幼少期から特撮作品の怪獣や怪人に魅了され、小学生の頃には貝塚ひろしの空戦漫画に影響を受けて漫画を描き始めます。その後、小沢さとるや松本零士の作品にも影響を受け、中学時代には友人たちと漫画を描き合う日々を送りました。高校時代には戦闘機ものの作品を少年誌に投稿するも、受賞には至りませんでした。大学在学中に『週刊少年サンデー』で「残暑」が入選し、デビューを飾ります。

連載デビューまでの道のり

大学卒業後は自動車メーカーにエンジニアとして就職しますが、漫画家への夢を諦めきれず退職。上京し、きくち正太のアシスタントとして働きながら、『週刊少年チャンピオン』に投稿した作品で受賞します。しかし、連載企画が通らなかったことから、自身の作風が少年誌には向いていないと感じ、『月刊アフタヌーン』へと投稿先を変更。1995年に「ヴァンデミエールの右手」がアフタヌーン四季賞準入選となり、翌年から『ヴァンデミエールの翼』として連載デビューを果たします。

SF作品での成功

1998年からは『月刊アフタヌーン』で『なるたる』の連載を開始。この作品は長期連載となり、アニメ化もされるなど、鬼頭莫宏の名を広く知らしめる出世作となりました。その後も、『マンガ・エロティクスF』で「外殻都市」シリーズを不定期連載し、『月刊IKKI』では『ぼくらの』を連載開始。こちらもアニメ化、小説化されるなど、人気を博しました。

病との闘いと執筆活動の再開

『ぼくらの』完結後も精力的に活動を続けますが、2011年に頸部脊柱管狭窄症を発症。連載を休止せざるを得なくなります。しかし、リハビリを経て執筆活動を再開。2019年からは『能力 主人公補正』、2020年からは『ヨリシロトランク』と、新たな作品の連載を開始しました。2021年には、ボルダリングを題材とした『のボルダ』の連載も開始し、完全復帰を果たします。

受賞歴と多岐にわたる活動

鬼頭莫宏は、その功績が認められ、数々の賞を受賞しています。代表的なものとして、『ぼくらの』で第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞しています。また、漫画作品以外にも、同人誌への参加、イラスト、寄稿など、多岐にわたる活動を展開しています。アニメ作品のデザインワークスにも参加するなど、その才能は様々な分野で発揮されています。

鬼頭莫宏の作品は、独特な世界観と、人間の内面を深く掘り下げたストーリーが魅力です。彼の描く少年少女たちは、時に残酷な運命に翻弄されながらも、強く生き抜こうとします。その姿は、読者の心に深く刻み込まれ、忘れられない感動を与えてくれます。

主な作品

なるたる
ぼくらの
殻都市の夢
双子の帝國
* のボルダ

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