魔界水滸伝

魔界水滸伝：クトゥルー神話と日本の神々が織りなす壮絶な物語

『魔界水滸伝』は、栗本薫による人気伝奇SF小説です。クトゥルー神話のモチーフを大胆に取り入れ、地球侵略を目指すクトゥルーの邪神と、それを阻止しようとする日本を中心とした地球古来の神々、そしてその圧倒的な力に翻弄される人類の戦いを壮大なスケールで描いています。

物語は、奇妙な悪夢に悩まされる大学生や女子大生らが出会い、狂気の天才画家が残した絵画から、クトゥルーの邪神による地球侵略の予兆を知るという衝撃的な場面から始まります。彼らは、古来より日本に存在した神々の末裔であり、侵略から地球を守る使命を背負っていることを知ります。しかし、主人公の一人である伊吹涼は、その血を引いていないという意外な事実が明らかになり、物語にさらなる複雑さと深みを与えます。

物語は、彼らの覚醒と、クトゥルーの邪神との戦いを軸に展開していきます。登場する神々は「百八の星」を背負い、それぞれ個性豊かな能力と役割を持っています。彼らは、ルポライターやオカルト研究家など、現代社会に生きる人間たちと手を組み、壮絶な戦いを繰り広げます。

主要登場人物は、それぞれに複雑な過去と背景を持ち、魅力的なキャラクターとして描かれています。安西雄介というルポライターは、クトゥルーと戦うために人類軍団を組織し、地球軍の総司令官となります。彼の仲間たち、天賦の才能を持つ超能力者や、元左翼セクトメンバーといった個性豊かな戦士たちが、地球防衛のために力を尽くします。一方、日本の神々である「先住者」たちは、それぞれの血統と能力を活かし、邪神に対抗します。

物語では、クトゥルーの邪神たちが次々と出現し、人類と神々の前に様々な脅威をもたらします。緊迫感あふれる戦闘シーンや、神々の圧倒的な力、そして人間たちの葛藤が描かれ、読者を深く物語の世界へと引き込みます。

連載と刊行

『魔界水滸伝』は、角川春樹の助言を受けて執筆が開始され、『野性時代』誌上で1981年から連載されました。その後、カドカワノベルズから刊行され、全20巻の大長編として完結しました。前半11巻は「魔界誕生編」、後半9巻は「地球聖戦編」として構成されており、さらに外伝として『白銀の神話』全4巻も刊行されています。これらの作品は、のちに角川文庫やハルキ文庫からも刊行され、幅広い読者層に親しまれています。

栗本の逝去後も、「銀河聖戦編」として続編『新・魔界水滸伝』が刊行されましたが、未完に終わっています。

イラストレーションは、永井豪やもりおかしんいちといった著名なイラストレーターが担当し、作品の世界観をさらに鮮やかに彩っています。

作品の影響

『魔界水滸伝』は、その独自の世界観と魅力的なキャラクター、そして壮大な物語展開で多くの読者を魅了し、日本におけるクトゥルフ神話ブームの先駆けとなったとも言われています。その影響は、後のクトゥルフ神話関連作品や、関連メディアにも及んでいます。また、ゲームブックやイメージアルバムといった関連作品も多数制作され、作品の世界観を多角的に楽しむことができます。

『魔界水滸伝』は、クトゥルー神話と日本の神話を融合させた、他に類を見ない独創的な作品です。その壮大なスケールと、魅力的なキャラクターたち、そして緊迫感あふれるストーリーは、現在でも多くのファンを魅了し続けています。 クトゥルー神話の知識がなくても十分に楽しめる、奥深い物語と言えるでしょう。興味を持った方は、ぜひ手に取ってみてください。

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