魲万里絵

人物概要

魲 万里絵（すずき まりえ）は、1979年（昭和54年）に生まれた日本の画家です。彼女の創作活動は、主に人間の肉体や身体の各部分をテーマにした絵画によって特徴づけられています。

画家としての歩み

長野県長野市で幼少期を過ごした後、5歳から8歳にかけて埼玉県熊谷市に移り住みました。その後、新潟市の高校に進学するも、3ヶ月ほどで故郷の長野市に戻るという、幼少期から青年期にかけていくつかの場所を転々とする経験を持っています。画家として具体的なモチーフを描き始めたのは2007年頃で、特に女性の身体やそのパーツに関心を寄せた作品を手がけるようになります。

活動の大きな転機となったのは2009年頃のことです。スイスのローザンヌで開催されたアール・ブリュット・コレクション「JAPON」展に関する朝日新聞の記事を目にした母親が、日本の事務局である滋賀県社会福祉事業団に連絡を入れたことから、滋賀県近江八幡市にあるボーダレス・アートミュージアムNO-MAとの繋がりが生まれました。この美術館は、後に彼女の主な活動拠点の一つとなります。同時期に、NO-MA所属作家たちの取材・撮影を行っていた写真家の大西暢夫氏と出会い、その後の活動において交流を深めていきます。

国内外での評価と展示

ボーダレス・アートミュージアムNO-MAを基盤に、魲万里絵の作品は国内外で注目を集めるようになります。2010年にはフランス・パリのパリ市立アル・サン・ピエール美術館で開催された「ART BRUT JAPONAIS」展に出品。さらに2017年には、フランス・ナントのフランス国立現代芸術センター リュー・ユニックで開催された日本のアール・ブリュット展「KOMOREBI」にも参加するなど、ヨーロッパでの主要な展覧会でその才能が紹介されました。これらの海外展には、写真家の大西暢夫氏や映画監督の代島治彦氏らが展覧会の撮影のために同行しています。

国内においても、彼女の作品は高く評価されています。2018年には、長野市の信州新町美術館で開催された「シンビズム 信州ミュージアム・ネットワークが選んだ20人の作家たち」に選出され、地元長野県でも大きな注目を集めました。この選出を機に、同じく参加作家であった美術家のナカムラマサ首氏と出会い、新たな芸術的交流が始まります。

彼女の活動は美術館の企画展に留まらず、メディアにも取り上げられました。2020年にはNHK Eテレの番組「no,art no,life」に出演し、広くその存在を知らしめました。同年には、東京藝術大学大学美術館で開催された特別展「あるがままのアート -人知れず表現し続ける者たち」にも作品が出展され、日本の現代アートにおけるアール・ブリュットの文脈で重要な位置を占めるようになります。

他の芸術家との繋がり

前述のナカムラマサ首氏とは、2019年からアーティストユニット「魲ムラマリ首（すずきむらまりくび）」を結成し、精力的に共同制作や企画展示を行っています。異なる表現手法を持つ二人の融合は、従来の個展とは一線を画すユニークな世界観を生み出しています。また、2020年からは切り絵作家の谷澤紗和子氏とも共同作品の制作に着手しており、その創作の幅をさらに広げています。他の芸術家との積極的なコラボレーションは、彼女の柔軟な創造性を示す側面と言えるでしょう。

制作環境

2022年からは、長野市鶴賀田町にある築80年の古民家を改装した「STUDIO & GALLERY K-LAB」を自身の制作スタジオとして使用しています。ここを拠点に、自身の制作はもちろんのこと、他のアーティストとの共同展示や企画展も開催するなど、長野におけるアートの発信地としても機能させています。この新しい制作環境は、彼女の今後の活動において重要な役割を果たすと考えられます。

魲万里絵は、アール・ブリュットという枠組みの中で語られることが多い画家ですが、その活動は国内外の美術館展示、他の芸術家との多岐にわたるコラボレーション、そして自身のスタジオ運営に至るまで、常に新しい表現と交流の可能性を探求し続けています。肉体という普遍的なモチーフを通して描き出される彼女の作品は、観る者に強い印象を与え、その創造性は今後もさらなる広がりを見せることでしょう。

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