鰍沢

鰍沢（かじかざわ）

概要

「鰍沢」は、古典落語の中でも特に人気の高い演目の一つで、一般的には三遊亭圓朝が手がけた三題噺として知られています。別名には「鰍沢雪の酒宴」や「月の輪お熊」などがありますが、実は河竹黙阿弥の作品であるという異説も存在します。また、黙阿弥はこの演目の続編「鰍沢二席目」も作成しています。

あらすじ

物語は、冬の甲斐を訪れた商人が雪道に迷い、鰍沢近辺で宿を探すところから始まります。大雪の中、彼は偶然一軒の宿を見つけ、宿主の美しい女性お熊と出会います。しかし、お熊には隠された過去があり、この瞬間から物語は進展していきます。彼女は元々吉原の遊女であり、心中を図ろうとした猟師の妻です。

商人は、寒さから身を温めるために囲炉裏に座り、お熊が持っている卵酒を勧められます。お熊は彼に飲むようにしつこく促し、商人は少しだけ口にします。しかし、この卵酒には痺れ薬が盛られていました。この後、商人は酔いつぶれ、眠りに落ちますが、彼のすぐ後に旦那の伝三郎が帰ってきます。

伝三郎が卵酒を飲み干した瞬間、彼は意識を失い、そこに現れたお熊はそのことを商人に明かします。商人はこの事実に驚き、逃げようとしますが、少量の卵酒が影響して行動が制限されます。彼は雪の中に倒れ込むものの、偶然持っていた「毒消しの護符」に気づき、それを使って再び身を動かせるようになります。

逃げる商人と追うお熊との一悶着の中、商人は驚くべき運命に導かれ、雪崩に押し流されつつも心の底から祈りを唱えます。ひたすらに逃げ続け、御利益により無事に難を逃れることができるのです。

鰍沢二席目

続編「鰍沢二席目」は河竹黙阿弥によって創作され、「晦日の月の輪」という別名も持っています。物語では、商人とお熊の運命が暗示されており、商人が復讐のために再登場するといった流れが描かれています。今度は新潟の荒物屋の息子宗二郎と後家のお花が駆け落ちし、再びお熊の影が絡む形での強盗劇が展開されます。この経過もまた、物語のスリリングな要素を引き出しています。

演者と影響

この演目を得意としていたのは、4代目橘家圓喬です。彼の名演は多くの落語家や評論家に影響を与え、例えば5代目古今亭志ん生は彼の演技に驚嘆し、「実際に流れが見える」と賞賛しました。また、幽霊の復讐劇としてドラマ化された「怪談・鰍沢」もその影響を示しています。

このように、鰍沢は単なる落語の一演目を超え、深い人間ドラマとミステリー性を持つ作品として、現在まで受け継がれています。

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