鰐口

鰐口（わにぐち）

鰐口とは、仏堂の正面軒先に吊り下げられる仏具の一種です。神社でも社殿に設置されていることがあります。金口（きんこう）、金鼓（きんこ）とも呼ばれます。

歴史

「鰐口」という名称が確認できる最も古いものは、正応6年（1293年）の銘を持つ、宮城県柴田郡大河原町の大高山神社に伝わるものです（現在は東京国立博物館が所蔵）。

形状と構造

鰐口は金属製の梵音具であり、鋳銅や鋳鉄で作られたものが多く見られます。その形状は、鐘と鼓を合わせたような独特の形で、鈴を平たくしたような形をしています。上部には、吊り下げるための耳状の取手が二つあり、下側半分の縁には細い開口部があります。

鰐口には「金の緒」と呼ばれる布が付属しており、この緒で鼓面を打ち鳴らして誓願成就を祈念します。鼓面の中央は撞座（つきざ）と呼ばれ、圏線によって内側から撞座区、内区、外区に区分されています。

現存する最古の鰐口

現在確認されている中で最も古い鰐口は、長野県松本市宮渕で出土した、長保3年（1001年）の銘を持つものです。この鰐口は、日本の仏教文化における鰐口の歴史を語る上で非常に重要な資料となっています。

鰐口の役割

鰐口は、仏堂や神社において、参拝者が神仏に祈りを捧げる際に打ち鳴らすことで、その音によって神仏の降臨を願ったり、誓願を表明したりする役割を担っていました。現代でも、その音は人々の信仰心を支え、神聖な空間を演出する重要な要素となっています。

参考文献
* 香取忠彦「鰐口」『国史大辞典』

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