鰓脚綱

鰓脚綱（Branchiopoda）

鰓脚綱は、甲殻類に属する多様な生物群であり、カブトエビ、ミジンコ、ホウネンエビなどが含まれます。主に陸水に生息する小型の甲殻類で、その独特な形態と生態で知られています。

形態

鰓脚類は、一般的に以下のような特徴を持ちます。

小型: 大きくても数cm程度で、ミジンコ類は微小なプランクトンとして知られています。
触角: 第一触角は単純で発達せず、第二触角は退化的、または遊泳用に発達します（ミジンコ類）。
口器: 大顎髭はなく、小顎は小さく目立ちません。
体節: 胴部は多くの体節からなり、胸部と腹部に区別できます。
付属肢: 胸部には鰭状の葉状脚があり、遊泳や摂食に用いられます。
背甲: 多くの種で背甲が発達し、胴部を覆います。
眼: 成体になってもノープリウス眼が残ることが多いです。

生態

鰓脚類は、遊泳を中心とした運動を行い、歩行はほとんどしません。胸脚を波打つように動かしたり、第二触角で跳ねるように遊泳します。

生息環境

大部分は陸水に生息し、淡水から塩水湖まで様々な環境に適応しています。一時的な水たまりに生息するものも多くいます。

食性

主に水中の微粒子や植物プランクトンを摂取しますが、肉食性の種も存在します。

繁殖と発育

多くの種が耐久卵を産み、休眠と繁殖を繰り返します。単為生殖を行う時期があるものもいます。孵化後の幼生は、ノープリウス幼生と呼ばれる形を経て成体へと成長します。

分類

かつては原始的な甲殻類と考えられていましたが、分子系統学的な研究により、むしろ派生的な位置にあることが示唆されています。

下位分類

鰓脚綱は、以下の亜綱、目に分類されます（2018年時点）。

サルソストラカ亜綱 (Sarsostraca)
無甲目 (Anostraca): ホウネンエビ、アルテミアなど。背甲を持たない。
カブトエビ亜綱 (Calmanostraca)
背甲目 (Notostraca): カブトエビ。
双殻亜綱 (Diplostraca)
タマカイエビ目 (Laevicaudata): カイエビ類
カイエビ目 (Spinicaudata): カイエビ類
キクレステリア目 (Cyclestherida): カイエビ類
枝角上目 (Cladocera): ミジンコ類
異脚目 (Anomopoda): ミジンコ、ゾウミジンコなど
櫛脚目 (Ctenopoda): シダミジンコ、ウスカワミジンコなど
単脚目 (Haplopoda): ノロミジンコ
鉤脚目 (Onychopoda): オオメミジンコなど

また、化石種のみで知られる目として、†レピドカリス目 (Lipostraca)や†ジェアンロゲリウム目 (Kazacharthra)があります。

鰓脚類は約1200種が記載されており、実際にはその2倍の種数が存在すると予想されています。多様な環境に適応した鰓脚類は、水生生態系において重要な役割を果たしています。

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