鰻屋 (落語)

鰻屋（うなぎや）

『鰻屋』は日本の古典落語の一つで、元は安永6年（1777年）に出版された『時勢噺綱目』の中に収められた「俄旅」に由来します。この物語は、さまざまな演者によって演じられ、特に東京の5代目古今亭志ん生や6代目三遊亭圓生が有名です。また上方では初代桂春団治や橘ノ圓都などがこの噺を演じることでも知られています。

あらすじ

物語は、新たに開業した鰻屋の主人が困惑している様子から始まります。主人は鰻を捌くことはおろか、捕まえることすらままならず、苦戦しています。それを目撃した若い二人組が主人をからかう形でやって来ます。「おっさん、鰻をうまく捕まえられなさそうだから、一杯やりに行こうぜ！」と、主人の様子を見つつ冗談を言うのです。

若者たちの会話は面白おかしく進み、「あの大きくて脂の乗った鰻にしよう」と言いつつ、実はその鰻には「光秀鰻」と名付けられた危険な一匹であることが暴露されるシーンもあります。主人はその言葉に困惑し、「獲物を選んだらすぐに捕まえなければ！」と必死に鰻に挑んでいきます。しかし、捕まえようとするたびに鰻は逃げ、主人は混乱して表へと飛び出してしまいます。

主人が町を一周して戻ってくると、彼の妻が驚きながら尋ねます。「あなた、どこに行っていたの？」という問いに、周囲の人々からの「鰻を追いかけて外に出た」という答えが返ってきます。このドタバタ劇が、噺の中の楽しい場面を引き立てます。

様々な演出

この作品の魅力の一つは、演者によってさまざまに解釈される点です。春団治は、鰻を掴んだ主人が電車に飛び込むという意外な展開で観客を驚かせました。彼は鰻を追いかける様子をユニークな動きで表現し、観客に笑いをもたらします。一方、圓都は『鰻谷』という地名の由来を絡めて、ストーリーを豊かに展開しました。

馬風は、鰻を蛇に置き換える奇抜な演出「大蛇屋」として演じ、そのストーリーは独特の面白さを持っています。いずれの演者も、鰻をつかむ主人の苦境を通じて笑いを生み出しており、その中で彼らのアクが強い個性も光ります。

また、他の演者もこの作品に自らの工夫を施し、枝雀（2代目）はごちそうされる側の男の前日談を交え、さらに鰻のさばき方の指導をしつつ、観客を楽しませました。

類似の話

『鰻屋』に似たテーマの作品には『素人鰻』や『月宮殿』があります。『素人鰻』では、商売に不慣れな士族が失敗する様子が描かれています。『月宮殿』では鰻を掴んだ男が宇宙に昇るほぼ同じ前半部を持ちながら、異なる展開を見せます。

このように、古典落語『鰻屋』は、鰻を巡るドタバタ劇を通じて観客を楽しませる作品であり、さまざまな演者によって独自の魅力を持っています。

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