鱗珪石

鱗珪石：高温で形成される石英の仲間

鱗珪石（りんけいせき、英名：tridymite）は、二酸化ケイ素（SiO₂）からなる鉱物の一種です。石英と同じく二酸化ケイ素から構成されますが、石英とは異なる結晶構造を持つ、高温型の多形体にあたります。そのため、地質学的な高温環境で形成された岩石中に見られることが多く、火山岩の空隙などに産出します。

名称の由来と発見の歴史

鱗珪石という名前は、その特徴的な結晶形状に由来します。通常、三連の双晶（複数の結晶が規則的に連なって形成されたもの）として産出することから、ギリシャ語で「三つ子」を意味する「Tridymos」にちなみ命名されました。1868年、メキシコのイダルゴ州で最初に発見され、記録に残されています。

物理的性質と特徴

鱗珪石は、870℃から1470℃という高温範囲で安定な結晶構造を保ちます。通常、肉眼では確認しづらい、微小な白色もしくは無色の結晶として観察されます。結晶系は疑六方晶系または三斜晶系に分類されます。

主な物理的性質は以下のとおりです。

モース硬度: 6.5～7
比重: 2.28～2.33

これらの性質は、石英と比べてわずかに異なりますが、肉眼での識別は容易ではありません。顕微鏡を用いた観察や、X線回折などの分析手法が必要となる場合が多いです。

産出環境と関連鉱物

鱗珪石は、主に火山活動によって形成された岩石中に産出します。火山岩の空隙や、溶岩が急速に冷却固化された際に生じる空間に、微小な結晶として存在していることがよくあります。そのため、火山岩の研究において、重要な指標鉱物の一つとなっています。

鱗珪石に関する研究と安全データ

鱗珪石は、地質学、鉱物学の分野で盛んに研究されています。その結晶構造や生成条件、産出環境に関する研究論文が数多く発表されており、地球科学の理解に貢献しています。

また、鱗珪石を含む結晶質シリカは、粉塵として吸入した場合、健康に悪影響を及ぼす可能性があることが知られています。そのため、安全データシートが作成され、作業環境における安全管理に活用されています。厚生労働省の職場の安全サイトなどから、関連情報を確認することができます。

まとめ

鱗珪石は、石英の高温型多形体として、火山岩中に産出する微小な鉱物です。その特徴的な結晶構造と、高温環境での生成という性質から、地球科学の研究において重要な役割を果たしています。一方で、粉塵吸入による健康への影響についても注意が必要です。

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