鳥の子色

鳥の子色（とりのこいろ）は、鶏の卵の殻の色を指す日本の伝統色です。その特徴は、ごく淡い黄褐色、または黄色がかった白であり、非常に優しい色合いを持っています。鎌倉時代からその名が知られるようになり、日本の色彩文化において重要な位置を占めてきました。

この色の起源は、文字通り鶏の卵の殻の色ですが、時が経つにつれて、鳥の子紙の色と混同されることがありました。鳥の子紙は、元々この色に近いものだったため、この誤解が生じたと考えられます。しかし、時代が進むにつれて、鳥の子色は次第に白っぽく変化していきました。この色の変化は、人々の美的感覚や生活様式の変化を反映しているとも言えるでしょう。

鳥の子色は、単色としてだけでなく、重ねの色目としても用いられてきました。特に、老人の衣装に用いられる際には、表地に瑩色（みがきいろ、光沢のある白）、裏地に蘇芳色（すおういろ、深みのある赤）を組み合わせることが一般的でした。この配色は、老人の落ち着きと内面の情熱を表現していると考えられ、日本の伝統的な色彩感覚をよく表しています。

関連する色としては、同じく卵にちなんだ卵色（らんしょく）がありますが、こちらは卵黄の色を指します。ただし、鳥の子色を「卵色」と呼ぶこともあり、クーピーペンシルの「たまごいろ」は、この鳥の子色に近い色合いをしています。また、長崎盛輝は、鳥の子色の英名として「アイボリー」を紹介しており、西洋の色彩感覚との関連性も示唆しています。

現代においても、鳥の子色は日本の伝統色として愛され続けており、その繊細な色合いは多くの人々に親しまれています。最近では、落語家の立川晴の輔が、2024年4月より出演している「笑点」の大喜利コーナーで着用する着物に、この鳥の子色が採用されたことも話題となりました。これは、伝統的な色が現代の文化の中で新たな形で活用されている良い例と言えるでしょう。

鳥の子色は、その歴史的背景や色の変化、そして現代における活用など、様々な側面から見ても興味深い色であり、日本の色彩文化を語る上で欠かせない存在と言えるでしょう。

参考文献
福田邦夫『すぐわかる　日本の伝統色』東京美術
吉岡幸雄『日本の色辞典』紫紅社
長崎盛輝『かさねの色目　平安の配彩美』青幻社

関連項目
卵色
アイボリー
立川晴の輔

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