鳥沼公園

鳥沼公園

北海道富良野市に位置する鳥沼公園は、市街地からやや離れた郊外、北海道道298号線沿いに広がる自然豊かな都市公園です。その名はアイヌ語で「鳥のいる沼」を意味する「チカプ・ウン・トー」に由来しており、かつて多くの野鳥で賑わっていた園内の沼の様子を今に伝えています。

この公園は、もともと多目的な利用を想定した総合公園として計画されましたが、1984年に自然景観を重視した風致公園へと種別が変更されました。この方針転換により、公園の核である原生林の豊かな自然が最大限に保全・活用されることとなりました。

園内には、ミズナラやハンノキ、ヤチダモといった樹々が手つかずの状態で茂る原生林が広がっています。この多様な植生は、約40種類にも及ぶ様々な野鳥や、愛らしいエゾリスなどの小動物にとって格好の生息地となっており、訪れる人々は四季折々の風景とともに、多種多様な動植物の姿を間近に観察することができます。特にバードウォッチング愛好家にとっては魅力的なスポットです。

公園の中心に位置する沼は、園内に湧き出る澄んだ湧水によって満たされています。この湧水のおかげで沼の水は非常に高い透明度を誇り、その底まで見通せるほどです。また、この沼は周辺地域では珍しい不凍沼であり、厳しい冬の期間でも全面結氷することなく、その神秘的な美しさを保ち続けます。季節ごとに見どころも多く、春には沼の畔に可憐なミズバショウが咲き誇り、夏の夜には幻想的なホタルの光が沼の上を舞い、訪れる人々を魅了します。

園内には、歌人・小田観蛍の歌碑も建立されています。ここに刻まれた歌は「十勝岳 火は生くかぎり 絶えせねば はしき道も れは行くべし」というもので、十勝岳への強い思いと、困難に立ち向かい道を切り開いていく決意が込められています。公園の静寂の中でこの歌に触れると、より深く自然や歴史に思いを馳せることができます。

近年、鳥沼公園は予期せぬ自然現象によって全国的な注目を集めました。2016年8月下旬に北海道を襲い、各地に甚大な被害をもたらした台風10号の通過後、それまで透明だった沼の水が、美瑛町の有名な観光地である「青い池」を思わせるような鮮やかなコバルトブルーに変色したのです。この美しい変色現象の原因については、現時点でもまだ明確には解明されていませんが、特に二箇所あるとされている湧水口付近でその色がより顕著に見られると報告されており、新たな神秘として多くの人々を惹きつけています。

かつて、鳥沼公園は自然散策だけでなく、様々なレクリエーションを楽しむことができる場所でした。園内にはキャンプ場が併設されており、多くの家族連れやアウトドア愛好家で賑わっていましたが、残念ながら2003年に閉鎖されました。また、夏季の日中には、沼でボートを無料で利用することが可能でした。このボートはセルフサービス方式でしたが、澄んだ水の上でゆったりと過ごすことができるため人気のアクティビティでしたが、これも2016年に利用が終了しています。現在、これらの施設は利用できませんが、公園本来の自然景観はそのままに保たれています。

鳥沼公園の豊かな自然とその美しい景観は、多くの人々に愛されるだけでなく、メディアにも登場しています。フジテレビ系列で長年にわたり放送され、日本の国民的ドラマとして広く知られる『北の国から』シリーズの、『北の国から'98時代』では、物語の重要な舞台の一つとして登場しました。また、山崎豊子の小説を原作としたTBS系列の大型ドラマ『華麗なる一族』でも、その美しい風景がロケ地として使用されており、ドラマを通して公園の存在を知った人も少なくありません。

手つかずの自然が残り、神秘的な沼の色や豊富な動植物が観察できる鳥沼公園は、静かに自然と向き合い、心穏やかな時間を過ごしたい人々にとって、今なお魅力的な憩いの場であり続けています。

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