鳥羽市立海の博物館

鳥羽市立海の博物館は、三重県鳥羽市浦村町に位置し、海と共に生きてきた人々の暮らし、文化、経済活動を幅広く紹介する博物館です。この博物館は、単なる展示施設ではなく、海と人との関わりを深く掘り下げた研究拠点としての役割も担っています。

博物館の概要

「海民（かいみん）」と呼ばれる人々が、海とどのように関わりながら生活してきたのか、その歴史や文化を様々な角度から調査・研究し、展示や教育活動を通じて一般に公開しています。研究分野は非常に多岐にわたり、水産業、海運業、造船といった経済活動から、宗教、民俗、文化、資源保護、海洋汚染といった社会問題まで、海に関わるあらゆる側面を網羅しています。

資料収集においては、「どんなものでも集める」という方針を掲げ、特定の価値観に偏ることなく、幅広く資料を収集しています。特に三重県の海沿い地域、志摩半島や熊野灘沿岸の漁村からの収集が多いですが、船や海女に関する資料など、海外からの貴重な資料も含まれています。約6万点に及ぶ実物資料の中には、6,879点もの重要有形民俗文化財が含まれており、写真資料も約12万点に達します。館内には、日本各地から集められた約80隻の木造船が展示されており、圧巻です。

歴史

博物館は、もともと鳥羽市街地近くに設立されましたが、資料の増加に伴い、保管スペースの問題や建物の老朽化に直面しました。1985年に収蔵資料の一部が重要有形民俗文化財に指定されたことを機に、文化庁の補助を受けて現在の場所に移転、新築されました。バブル景気の中で、旧所在地跡の土地を売却できたことで、展示棟も建設することができ、1992年に全面移転が完了しました。

開館当初から運営を担ってきた東海水産科学協会が経営難に陥ったため、2017年10月からは鳥羽市が施設を設置し、同協会が指定管理者として運営する現在の体制に移行しました。

博物館のテーマ

博物館は、以下の4つのテーマを活動の柱としています。

1. 海に生きる人々 - 海民: 海と共に生きる人々の生活、文化、歴史に焦点を当てています。
2. 船 - 木造船の世界: 日本各地の木造船を展示し、造船技術や船の文化を紹介しています。
3. 魚介藻を獲る - 漁具と漁法: 漁業に使われる様々な道具や漁法を展示し、漁業の歴史を伝えています。
4. 海の環境を守る - 汚染の現状: 海洋汚染の現状を伝え、環境保護の重要性を訴えています。

建築の特徴

博物館の建物は、以前の場所で塩害に苦しんだ経験から、外装材に金属を極力使わず、全ての建物の屋根を日本瓦で葺くという工夫が凝らされています。これにより、周辺の漁村風景に溶け込むようなデザインとなっています。バブル[[経済]]期にもかかわらず、低コストで建築できたことも特筆すべき点です。

重要文化財収蔵庫

資料の材質に合わせて最適な湿度管理を行うため、3棟の収蔵庫を5つのブロックに分け、床や壁の仕上げ材をそれぞれ変えています。船の収蔵庫のみが一般公開されており、入室にはスリッパへの履き替えが必要です。

展示棟

鉄筋コンクリート造と木造トラス構造を組み合わせた2階建ての建物で、展示スペースとして利用されています。

体験学習棟

鉄筋コンクリート造と木造を組み合わせた2階建ての建物で、体験学習プログラムなどに利用されています。

アクセス

公共交通機関を利用する場合は、鳥羽駅前の鳥羽バスターミナルからかもめバスに乗車し、約35分で海の博物館前バス停に到着します。そこから徒歩約7分です。車の場合は、国道167号からパールロード（三重県道128号鳥羽阿児線）に入り、鳥羽駅から約20分で到着します。

受賞歴

博物館の建物は、日本文化デザイン賞、公共建築百選、日本建築学会賞作品賞、芸術選奨文部大臣新人賞、吉田五十八賞、日本建築家協会JIA25年賞など、数々の賞を受賞しており、建築的にも高い評価を受けています。

まとめ

鳥羽市立海の博物館は、海と共に生きてきた人々の知恵と文化を深く理解するための貴重な場所です。展示資料だけでなく、建築物そのものからも、地域の歴史や文化を感じることができます。海に興味がある人はもちろん、そうでない人も、訪れる価値のある博物館と言えるでしょう。

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