鳴海邦碩

鳴海 邦碩（なるみ くにひろ、1944年7月27日生まれ）は、日本の都市環境デザイン研究家であり、著名なアーバンデザイナーです。長年にわたり大阪大学大学院で教鞭を執り、環境工学専攻都市環境デザイン学領域の教授として活躍されました。

経歴と学術的貢献

青森県に生まれた鳴海氏は、1968年に京都大学工学部建築学第二学科を卒業後、1970年に同大学院修士課程を修了しました。キャリアの初期には兵庫県の技師を務め、その後、京都大学の建築系学科で助手を経て、1979年に大阪大学環境工学科の助教授に就任しました。大阪大学では、都市空間における人間と環境の関係性に着目し、都市環境デザイン学の確立と発展に大きく貢献しました。退職後は名誉教授となっています。

主な作品とプロジェクト

鳴海氏は理論研究に加え、数多くの実践的な都市デザインプロジェクトに携わっています。代表的なものとしては、堺市の歴史ある大小路通りにおけるシンボルロード計画（竹中工務店開発計画本部らと共同）や、奈良町の伝統的な景観を守りつつ未来を創り出す「100年計画：Creating The Future Tradition」（1993年、田端修らと共同）が挙げられます。また、大阪市湊町地区の環境整備とサイン計画（1994年、小浦久子らと共同）や、環境共生をテーマにした「エコシティ - 新・水の都大阪」（1995年、日建設計増田昇らと共同）、そして北摂住宅地区ゆりのき台における環境共生住宅街区基本計画「自然に親しみ自然を育てる街」など、その活動は多岐にわたります。これらのプロジェクトは、都市空間の質を高め、住民の生活環境を向上させることを目指したものです。

受賞とその評価

鳴海氏の研究成果と実践活動は高く評価されており、数々の賞を受賞しています。特に1988年には、都市空間における生活や自由に着目した著書『アーバン・クライマクス』を中心とした一連の業績が認められ、権威あるサントリー学芸賞を受賞しました。1995年には、OCATウォーク・デザインにおける地球駅・OCA環境デザインの監修を務め、このデザインは1997年の第4回空間デザイン・コンペティション-ガラスブロック作品例部門で佳作に選ばれています。また、阪神・淡路大震災後の復興においては、震災復興まちづくりへの提言が兵庫県に評価され、兵庫県功労者表彰を共同受賞しました。1990年には、ダイキンOSAKAアトリオA・Bの企画構想により、第10回大阪都市景観建築賞奨励賞を受賞するなど、都市景観に対する貢献も特筆されます。

主要な著書

鳴海氏の思想は多くの著書にまとめられています。都市における道や街路の役割、自由な空間の可能性を探求した初期の代表作に『都市の自由空間 道の生活史から』（中公新書、1982年）があり、その後改訂版として『都市の自由空間 街路から広がるまちづくり』（学芸出版社、2009年）が出版されています。サントリー学芸賞受賞の対象となった『アーバン・クライマクス 現象としての生活空間学』（筑摩書房、1987年）は、都市の現象を生活空間学の視点から深く分析した重要な著作です。その他にも、『都市の開発と保存』、『景観からのまちづくり』、『都市環境デザイン』など、多数の共編著があり、日本の都市環境デザインに関する研究や教育に大きな影響を与えています。

鳴海邦碩氏は、理論と実践の両面から日本の都市環境デザイン分野を牽引し、人々がより豊かに暮らせる都市空間の実現に向けて多大な貢献を続けています。彼の業績は、今後のまちづくりにおいても重要な示唆を与えています。

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