鴉鷺合戦物語

『鴉鷺合戦物語』について

『鴉鷺合戦物語』（あろかっせんものがたり）は、京都を舞台にした御伽草子であり、疑似軍記物としての特性を持っています。この物語は、巻数について2巻または3巻という説があり、著者については一条兼良が有力視されていますが、正確なところは不明です。内容的には、応仁の乱の前後、15世紀末を背景にして成立したと考えられています。

あらすじ

物語は、祇園の林に住むカラスの東市佐林真玄が主人公です。彼は中賀茂の森に住むサギ、山城守津守正素の娘に恋をし、結婚を望みます。しかし、彼の期待に反して、相手からは辱めを受けてしまいます。この出来事に心を痛めた真玄は、仲間を呼び集めて激しい戦いを繰り広げますが、結果として彼の軍勢は敗北を喫します。

敗北した真玄は出家を決意し、高野山へと向かいます。一方、サギの山城守津守正素もこの出来事に影響を受け、同様に出家の道を選びます。そして、二人は高野山で再会し、それぞれ「烏阿弥陀仏」、「鷺阿弥陀仏」と名乗り、仏道修行に励むことに決めます。

その他の情報

『鴉鷺合戦物語』は、ことわざ「籠の中の鳥」の出典の一つです。「サギの一門をば、籠の中の鳥の如くにして、皆腹を切らすべし」という表現が含まれています。同様の表現は、14世紀末の歴史物語『太平記』にも見られ、また18世紀中頃の『本朝廿四孝』にも類似の形で現れています。

また、「鬼に金棒」ということわざも本作と関連しています。この表現には17世紀中頃の『毛吹草』で見られる「鬼に金撮棒」という言い回しが起源となっていることが指摘されています。

物語の背景にある時代、また様々なことわざとの関連性は、当時の社会状況や文化を反映しており、興味深い研究対象となっています。特に、登場人物たちの出家は、当時の精神文化や宗教観とも繋がっていると考えられます。

参考文献

『室町物語集』に収録されており、新日本古典文学大系から入手可能です。また、物語の舞台である糺の森も関連項目として興味深い場所です。日本の古典文学における位置づけを理解するために、ぜひこの作品に触れてみてください。

もう一度検索