鴨の入首

鴨の入首（かものいれくび）は、相撲における決まり手の一種ですが、日本相撲協会が定める八十二手には含まれていません。反り手、または捻り手に分類される技です。

概要

鴨の入首は、書籍によって解釈が異なります。

1902年の『日本相撲伝』では、両者が互いの腋の下に首を抱え込む体勢から、プロレスのブレーンバスターのように体を反転させ、仰向けに反り返った状態でブリッジのような形になる技と解説されています。この際、背中にあるまわしの結び目（三つ結い）が先に地面についた方が負けとされ、引き分けになることが多いとされています。プロレスのスインギング・ネックブリーカー・ドロップに類似した技と言えるでしょう。
1923年の書籍『相撲』では、理論上は同時に落ちるように思えるものの、実際には先に反り返った方が勝つことが多いという、その不可解さが述べられています。

技の分類についても見解が分かれています。

1885年の書籍『古今相撲大要』では反り手
1923年の書籍『相撲』では捻り手

とされています。

1900年の書籍『新編相撲叢話』では、徒然坊が、撞木反りと並んで珍しい技であり、明治10年頃に本場所で使用されたのを見たことがあると述べています。現在では花相撲以外ではほとんど見られない技であるようです。

現在、鴨の入首は日本相撲協会の公式な決まり手としては認められていません。しかし、アマチュア相撲、特に中学生以下の試合においては、両者が相手の腋の下に頭部を入れる体勢が危険と判断され、取り組を中止し、取り直しとなる場合があります。この体勢は「獅子の谷覗き（ししのたにのぞき）」という別名でも呼ばれています。

このように、鴨の入首は歴史的な文献には記録されているものの、現代相撲においては幻の技、あるいは危険な体勢としてその名残をとどめていると言えるでしょう。

もう一度検索