鴨澤巌

鴨澤巌の生涯と業績

鴨澤巌（かもざわ いわお、生年1924年3月、没年2003年2月4日）は、日本の経済地理学者として知られ、特にトルコに関する研究を通じて多くの業績を残しました。彼は法政大学の名誉教授であり、特定非営利活動法人難民支援協会の初代代表理事としても知られる存在でした。

幼少期から学生生活へ

鴨澤は東京市本郷区（現在の文京区）に生まれ、その後埼玉県浦和町（現さいたま市）へ移り住みました。彼は浦和町立浦和尋常高等小学校分校や埼玉県女子師範学校付属小学校で基礎教育を受け、1936年には埼玉県立浦和中学校、1942年には浦和高等学校（旧制）に進学しました。在学中、喘息の影響で留年を余儀なくされる一方、学徒勤労動員として理化学研究所の圧延工場で働く経験も積みました。1945年に浦和高等学校を卒業し、戦後は東京帝国大学（後の東京大学）の理学部地理学科に進学しますが、家庭の経済状況は厳しいものでした。

1948年に東京大学を卒業後、農林省に入省し、統計調査局での勤務を経て、1950年に退職しました。その際、結婚も経験しました。1951年からは東京大学の大学院に進学し、1953年からは法政大学で非常勤講師として教壇に立ちました。

学問との関わり

鴨澤は1954年に経済地理学会の創設にかかわり、その後も長らく評議員として活躍しました。さらに、地理教育研究会にも早くから関わり、その発展に寄与しました。彼の著書『経済地理学ノート』（1960年）は、経済地理学界に大きな影響を与えましたが、彼自身の意向で後に絶版となりました。これは、社会主義国の計画経済に対する無批判な礼賛を含んでいたことが一因ともされます。

鴨澤は、経済地理学における地誌の重要性を強調し、議論の中で「経済地誌学派」としての立場を確立しました。彼の立場は、後に批判を受けることもあり、さまざまな議論を呼び起こしましたが、これは彼の学問的健全性を証明するものでもありました。

ボランティア活動と晩年

1994年に法政大学を定年退職し名誉教授となった後、鴨澤はアムネスティ・インターナショナルのボランティア活動に専念しました。トルコ語のスキルを生かし、クルド人難民への支援活動を行っていました。これにより、彼はクルド人から「お父さん」という愛称で呼ばれるようになり、1999年には特定非営利活動法人難民支援協会（JAR）の初代代表理事に就任しました。

2003年に生涯を閉じるまで、彼はこの役割を担い続けました。彼の人生は、学問だけでなく、人権問題への取り組みによっても大きな足跡を残しています。

主要著作

• - 経済地理学ノート（法政大学出版会、1960年）
• - トルコと日本の間：偏見と真実の交錯（法政大学出版会、1969年）
• - 共編著: 現代世界の地域政策（大明堂、1988年）
• - 訳書: 世界の住民: 経済地理学的概観（大明堂、1976年）

鴨澤巌は、学問とボランティア活動の両面で多くの人々に影響を与え続けた、真摯な学者であり人道主義者の一人でした。

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