鵜飼弥三郎

鵜飼弥三郎の生涯

鵜飼弥三郎（うがい やさぶろう、生年不詳 - 1932年11月25日）は、日本の水泳界における重要な人物であり、明治・大正時代にその活動が脚光を浴びた選手です。彼は、日本で初めてクロール泳法を導入した選手であり、競泳日本代表として国際舞台でも活躍しました。

初期の経歴

横浜市の本牧に生まれた鵜飼は、船頭の息子として育ちました。子供の頃、横浜の野毛に位置する「忠泳館」の水泳教室で水泳を学びました。後には、そこで指導する側に回ることになりました。1911年、彼は時事新報社が主催する速力検定水泳大会で200ヤード自由形の優勝を果たし、その才能を発揮しました。

競泳界の発展と活躍

1913年には、第一回極東選手権競技大会が開催され、その影響を受けて日本競泳界は団結を強化しました。翌年の1914年には第一回全日本選手権大会が開かれ、鵜飼はオーストラリアンクロールを用いて、この大会で100m自由形、800m自由形、400mフリーリレーの3冠を達成しました。彼の100m自由形では9年間破られない日本新記録を樹立し、当時の新聞には「鵜飼弥三郎は萩原誠一郎とともに『クロール』で泳いだ」と記述されています。

高石勝男は、鵜飼を「日本にクロールを最初に取り入れた選手」とし、初期のころのクロールに対する理解が不足していたことを指摘しています。松沢一鶴は、鵜飼が実質的に「水府流太田派」に属する泳ぎ方を学んでいたと示唆した上で、彼はあくまで当時の水泳技術の中での進化に寄与したことを説明しています。このように、鵜飼の泳法が本格的に受け入れられるには時間がかかりましたが、彼はその舵取りの役割を果たしました。

国際的な舞台への進出

1915年には第2回極東選手権競技大会に日本代表選手として派遣され、50ヤード自由形、100ヤード自由形、440ヤード自由形、1マイル自由形の4冠を達成。これにより、彼は日本競泳界の存在を国際的に知らしめました。同年の8月には第2回全日本選手権大会で100m自由形、400m自由形での2冠を持って、さらにその名を馳せました。

1916年の第3回全日本選手権大会では、50ヤード自由形で3位、220ヤード自由形でも3位と好成績を残しましたが、当時成長著しい若手選手に対して完敗を喫しました。翌年には第3回極東選手権競技大会に出場し、50ヤード自由形で2位、220ヤード自由形で3位、200ヤードフリーリレーで優勝を果たします。1918年の第4回全日本選手権大会では、50m自由形で3位に入りましたが、それ以降は目立った成績を残すことはなく、1921年には競技から引退しました。

晩年と死去

鵜飼はその後も泳ぎを通して日本競泳界に多くの足跡を残しましたが、1932年に急逝しました。彼の死は『国民水泳教範』や『横浜中区史』によって伝えられ、多くの人々に惜しまれました。彼の業績は、日本におけるクロール泳法の普及と競泳の発展に大きく寄与し、今なおその影響力は続いています。

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