松沢一鶴

松沢 一鶴 - 日本競泳の先駆者

松沢一鶴（まつざわ いっかく、1900年9月7日 - 1965年1月10日）は、日本の競泳界における著名な選手・指導者である。東京都教育委員会の委員長としても活動し、1964年の東京オリンピックでは閉会式の演出を手掛けた人物でもある。

経歴

松沢は東京府京橋区で生まれ、東京市立泰明小学校や東京府立第一中学校を経て、第一高等学校を卒業し、1927年に東京帝国大学理学部化学科を卒業した。日本泳法の神伝流を習得し、水泳選手として輝かしい実績を残した。彼は1921年の第5回極東選手権競技大会で440ヤード自由形において優勝し、1923年の第6回大会では日本水泳チームの主将を務めた。

ロサンゼルスオリンピック（1932年）とベルリンオリンピック（1936年）では日本代表の水泳監督を務め、選手の指導に尽力した。1941年には大日本体育協会の事務局長に就任し、1940年に予定されていた東京オリンピックの開催に尽力するも、日中戦争の影響でオリンピックは返上された。

松沢は困難な時期においてもスポーツの重要性を訴え続け、1941年に密かに記録会を開催した。これにより、1936年のベルリンオリンピックに出場した児島泰彦は自己ベストを更新するなどの成果を得た。

戦後、彼は水泳界の再建に貢献し、日本水泳連盟の要職を歴任した。娘の松沢洋子はアーティスティックスイミングの草分けとなり、家系の水泳への情熱を引き継いでいる。1964年には東京オリンピック大会組織委員会の参事としても活動した。

人物・性格

松沢の人柄は愛称「カクさん」で親しまれ、博識でありながらも温和であった。教育委員長としては、非公認学校への圧力に屈せず、都の方針を貫いた姿勢が評価された。また、東京都内の地理に精通し、几帳面な性格で選手の記録を詳細に記録していた。

酒を愛し、宴席では楽しく飲む姿が印象に残った。1950年には、日本対アメリカ水上大会での歓迎会で泥酔して転倒するほどのエピソードもあり、酒豪としての評判も広がっていた。1964年の東京オリンピック中には血圧を気にしつつも、宴会では復帰した様子が見受けられた。

式典の神様

彼は「式典の神様」として知られ、明治神宮競技大会での演出が高く評価されていた。1958年のアジア競技大会では、光を使った演出で評価され、1960年ローマオリンピックの閉会式でも彼のスタイルが模倣された。1964年の東京オリンピックでは、選手が一団となって入場する演出が「東京式」と呼ばれるようになり、国際的にも評価された。

水泳選手としての功績

選手時代、松沢は神伝流の泳ぎ手として、滑らかで力強いスタイルを誇った。1919年の全国水泳大会での対決を経て、彼の泳ぎはクロールに転向した。この際、日本泳法とクロールの優劣に関する議論が生まれ、松沢は日本水泳界のクロールへの移行を促進した。

監督としての成功

松沢監督はオリンピックで日本選手団に多くのメダルをもたらした。ロサンゼルスオリンピックでは、選手との信頼関係を築き、科学的トレーニングを導入。ベルリンオリンピックでは課題を抱えたものの、素晴らしい成果を残した。

審判活動

競泳の審判としても活躍し、初心者への指導を熱心に行った。様々な大会で審判長を務め、常ににこやかに振る舞いながらも厳格な姿勢を保ちつつ、審判業務に従事した。

最後の時

1965年1月10日、松沢は64歳で脳卒中により逝去した。彼の死はスポーツ界に大きな影響を与え、多くの人々が彼を偲んだ。彼は正五位と勲三等瑞宝章を追叙贈られ、葬儀には多くの関係者が参列した。

松沢一鶴の功績は、日本の水泳界やスポーツ界において永遠に残り続けるだろう。

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