本牧

本牧（ほんもく）

神奈川県横浜市中区の南東部に位置する本牧は、かつて「本杢」とも書かれた歴史ある地域です。北は山手、西は根岸に接し、東と南は東京湾に面しており、関内地区の南側、沿岸部一帯に広がります。南北約3キロメートル、東西約3キロメートルの範囲をカバーしており、「本牧地区」という通称で親しまれています。

地理と歴史

本牧は、台地が東京湾に突き出した地形が特徴で、突端部にはかつて断崖が切り立っていました。この場所は「本牧岬」や「本牧の鼻」と呼ばれ、複雑な潮流が豊かな漁場を形成していました。しかし、戦後の埋め立て計画により、海岸線は大きく変化しました。地元漁協は当初反対運動を行いましたが、1959年に街の発展のために埋め立てに同意しました。現在では、海岸は全て埋め立てられ、工場や埠頭が立ち並ぶ工業地帯となっています。

本牧という地名は、1442年に「横浜」とともに初めて記録に登場し、「本目」と書かれたこともあります。語源は不明ですが、戦国時代には北条水軍の拠点としても重要な役割を果たしました。幕末には、ペリーが来航時に本牧の崖を「マンダリン・ブラフ」と名付け、横浜港への目印としました。現在でも、本牧市民公園付近に断崖の名残を見ることができます。また、古くから景勝地として知られ、外国人からは「ミシシッピ・ベイ」と呼ばれ愛されました。明治時代には、実業家の原富太郎（三溪）が別荘を構え、現在の三溪園として知られています。

米軍住宅地区

太平洋戦争後、本牧の中央部は米軍に接収され、住民は強制退去を余儀なくされました。接収地域はフェンスで囲まれ、在日アメリカ海軍の住宅街「ベイサイド・コート」が建設されました。この地域は「米軍ハウス」とも呼ばれ、アメリカ文化の発信地として、ジャズなどが盛んに行われました。1982年に返還された後、住宅地、ショッピングセンター、公園などに再開発されました。

歴史年表

1873年（明治6年）：神奈川県第1区7番組に編入。
1878年（明治11年）：久良岐郡本牧本郷村と北方村に分割。
1889年（明治22年）：本牧本郷村と北方村が合併し、本牧村が成立。
1901年（明治34年）：横浜市に編入され、本牧町となる。
1905年（明治37年）：三溪園が完成。
1911年（明治43年）：横浜電気鉄道本牧線が開通。
1945年（昭和20年）：横浜大空襲で大部分が焼失。米軍に接収される。
1959年（昭和34年）：根岸湾の埋め立て開始。
1982年（昭和57年）：米軍住宅地区が返還される。
1989年（平成元年）：マイカル本牧（現イオン本牧）が開業。

港湾と工業

本牧の海岸線は完全に埋め立てられ、根岸湾周辺には石油化学工場が立ち並びます。北側の本牧埠頭は、横浜港の貨物取扱いの中心となっており、広大なコンテナ埠頭が広がっています。沖合いには南本牧埠頭も完成し、物流拠点としての役割を担っています。

主な施設

三溪園
本牧市民公園
本牧臨海公園
本牧山頂公園
本牧埠頭
イオン本牧
山手警察署
横浜ベイブリッジ

文化と娯楽

かつてマイカル本牧として開業したイオン本牧は、映画館やホテルを備えた大型ショッピングセンターで、多くの人々で賑わいました。本牧ジャズ祭など、地域に根ざしたイベントも開催されています。

教育機関

神奈川県立横浜立野高等学校
神奈川県立横浜緑ケ丘高等学校
横浜市立本牧中学校
横浜市立大鳥中学校
横浜市立間門小学校
横浜市立本牧小学校
横浜市立本牧南小学校

交通

本牧への主なアクセスは、横浜駅や桜木町駅、根岸駅からのバス利用です。バス路線が発達しており、地域内での移動も便利です。ただし、鉄道は通っておらず、鉄道空白地帯となっています。現在、LRT（次世代型路面電車）の導入計画が進められています。

本牧にゆかりのある人物

柴田勲（読売ジャイアンツ）
アン・ルイス（歌手、ベイサイドコート育ち）
ザ・ゴールデン・カップス（バンド）
クレイジーケンバンド（バンド）
松岡直也（ピアニスト、東亜ホテルが生家）
SHELLY（タレント）
山本周五郎（小説家）
谷崎潤一郎（小説家）

関連作品

あぶない刑事（ドラマ）
しあわせの決断（ドラマ）
デジモンセイバーズ（アニメ）

本牧は、歴史と文化、自然と産業が融合した魅力的な地域であり、多様な側面を持っています。

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