鵠沼プールガーデン

鵠沼プールガーデン

鵠沼プールガーデン（くげぬまプールガーデン）は、神奈川県藤沢市鵠沼海岸四丁目に位置していた、かつて小田急電鉄によって運営されていた夏季限定のレジャープール施設です。地元住民や多くの来場者からは親しみを込めて「くげプー」と呼ばれ、湘南の夏の風物詩の一つとして記憶されています。

歴史とその変遷

そのルーツは戦前に遡ります。1936年（昭和11年）、湘南地域の子どもたちの体力向上と水難事故の防止を目的として、神奈川県立鵠沼プールとして開かれました。その後、施設の運営は1938年（昭和13年）に藤沢町へと移管され、藤沢町営鵠沼プールとなります。1940年（昭和15年）10月1日に藤沢町が市制を施行し藤沢市が誕生したことに伴い、施設名も藤沢市営鵠沼プールと改称されました。さらに時代を経て、1961年（昭和36年）4月1日には、整備が進められていた鵠沼海浜公園の一部として位置づけられることになります。

転機が訪れたのは1958年（昭和33年）でした。この年に襲来した台風によってプール施設は大きな被害を受け、当時の藤沢市は厳しい財政事情から十分な復旧を行うことが困難な状況に陥ります。このような背景の中、小田急電鉄が復旧と新たな運営に協力することとなり、公営プールから私鉄運営のレジャープールへと生まれ変わることになりました。そして、1961年（昭和36年）7月21日、小田急電鉄が経営する新しいプール施設として「鵠沼プールガーデン」が華々しくオープンを迎えます。これにより、湘南における夏のレジャー施設として、多くの家族連れや若者たちで賑わう人気スポットとなっていったのです。

施設の特徴

鵠沼プールガーデンには、複数のプールエリアに加え、時代に合わせて変化した子ども向けの大型遊具施設が設置されていました。開業当初は帆船を模した遊具が人気を集め、その後、親子亀の形をした遊具が登場しました。そして最終段階では、海賊船「スカイポンド・ジャーニー」が施設のシンボルとなりました。この海賊船は「スカポン」の愛称で親しまれ、子どもたちの冒険心をくすぐる存在でした。

夏季のみの営業で、最盛期には連日多くの入場者で賑わいましたが、時代とともにレジャーの多様化が進み、また周辺に辻堂海浜公園など公立の大型プール施設が整備されたことなどから、徐々に入場者数は減少傾向に転じます。施設の老朽化も無視できない課題となりました。

閉園、そして現在へ

入場者の減少と施設の老朽化という二重の課題に直面し、鵠沼プールガーデンはその歴史に幕を閉じることになります。2000年（平成12年）9月3日、惜しまれつつ最後の営業を終え、閉園となりました。約40年間にわたり、多くの人々の夏の思い出が詰まった場所でした。

閉園後、施設の土地使用権は再び藤沢市に戻されました。現在、この土地は「鵠沼海浜公園スケートパーク」として暫定的に利用されており、スケートボードやBMXなどのアクションスポーツを楽しむ若者たちの新たな拠点となっています。敷地の用途は変わりましたが、かつてこの場所がプール施設であったことを今に伝える名残も存在します。例えば、最寄りの江ノ電バスのバス停名は、現在でも「鵠沼プールガーデン」のまま残されており、往時を知る人にとっては懐かしさを覚える手がかりとなっています。

廃業時点での料金は大人1,800円、子供900円でした。

鵠沼プールガーデンは、時代の変化と共に姿を変えながらも、湘南のレジャー史において重要な一頁を飾る施設でした。その記憶は、今も多くの人々の心の中に鮮やかに残っています。

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