鵬翔丸

鵬翔丸（ほうしょうまる）: 幕末における洋式帆船

鵬翔丸は、幕末の日本において江戸幕府が運用した洋式の帆船であり、特に航海練習船としての役割を果たしました。その歴史は1857年に遡り、元々はイギリス商船「カタリナ・テレジア」として建造されました。

船の由来と購入

1858年、佐賀藩がオランダから輸入した工作機械を長崎港に輸送中の「カタリナ・テレジア」を幕府が購入しました。これにより、長崎海軍伝習所での使用が決まりました。この頃、練習艦「観光丸」がすでに移されたため、新たな練習用の艦が必要になっていました。
海軍伝習所での訓練は、特に横帆を使った航海技術の習得を目指しており、鵬翔丸はこの目的に非常に適した艦船とされました。

船の仕様

鵬翔丸は、蒸気機関を持たず、木造であり、長さ約36メートル、幅約7.5メートル、排水量340トンの小型帆船です。帆装は3本のマストを持ち、前2本に横帆、最後尾に縦帆を張る三檣バーク形式でした。武装としては大砲を4門備えていました。航海の際の安全性を確保するため、技術的な工夫がなされていました。

江戸回航

1858年2月、幕府は鵬翔丸の江戸回航を決定し、オランダ人教官と共に慣熟航海を重ねました。同年6月21日、船長の伊沢謹吾を始めとする60人の伝習生が江戸へと出航します。もともと勝海舟が船長に任命される予定でしたが、後に交代し、船は出発しました。途中、咸臨丸が引き続き協力し、短い期間内での日本人乗員のみの航海に挑むことになりました。

航海の成功とその後

船の船長であった伊沢謹吾は敢えて厳しい自然条件の中での航海を行いましたが、悪天候にもかかわらず鵬翔丸は6日間の航海を経て無事に浦賀に到着しました。この成功によって乗員たちは自信を持つようになりましたが、その航海の運用法に関しては多くの改善点が残されていました。

その後、鵬翔丸は江戸方面での軍艦操練所の練習船や物資運送船として利用されました。また、万延元年に行われた遣米使節派遣の際にも候補として挙がりましたが、蒸気船でないことから最終的には選ばれませんでした。

神奈川警衛と沈没

万延元年3月には、鵬翔丸は石炭搭載のために小名浜へ派遣され、そこで塩の輸送を行いました。その後、同年6月には再度「咸臨丸」と交代し、神奈川港の警衛に配備されました。

1860年9月8日、鵬翔丸は下田沖で台風に巻き込まれ、沈没しました。この事故により、船の乗員たちの多くが失われる悲劇が起こり、航海の歴史に一つの終止符が打たれました。

結論

鵬翔丸は、幕末の日本における洋式帆船の重要な役割を果たし、特に訓練の場として未来の海軍に寄与しました。彼の航海の成功と悲劇は、日本の海軍史における貴重な経験と教訓を残しました。

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