観光丸

観光丸について

観光丸（かんこうまる）は、江戸幕府が受け取った歴史的な軍艦であり、後に明治政府の軍務官直轄の軍艦へと移行しました。その名は中国の『易経』に出てくる「観国之光（国の光を観る）」に由来しており、現在の「観光」という言葉もここから派生しています。

概要

1855年（安政2年）、観光丸はオランダより江戸幕府に寄贈された軍艦であり、長崎海軍伝習所練習艦としての役割を果たしました。この艦は、日本初の木造外車式蒸気船であり、旧名はスームビング号（Soembing）です。特に、3檣スクーナー型のコルベットとして設計され、外輪式の構造が特徴的でした。

艦歴

観光丸の建造は1850年（嘉永3年）にオランダのフリシンゲンで始まり、1853年（嘉永6年）に完成しました。オランダ政府は、日本におけるアメリカ艦隊の活動を把握するため、艦長にヘルハルドゥス・ファビウス中佐を派遣し、1854年（嘉永7年）に長崎に到着します。この出来事が、後に長崎海軍伝習所の創設へと繋がる重要な一歩となりました。

オランダ商館のヤン・ドンケル・クルティウスは、日本に西洋の優れた文化を浸透させ、開国を促進するために観光丸を活用しました。彼はファビウス中佐と共に、日本での海軍教育の開始を目指しました。これにより、幕府は海軍伝習計画を立て、各藩から優秀な人材が長崎に送られて教育を受けることとなります。

日本への寄贈と教育活動

1855年（安政2年）6月7日には、スームビング号はオランダ国王ウィレム3世から日本の徳川家に寄贈され、観光丸と名付けられました。この際、日本の側からは当時の一流の絵師による金屏風が贈呈され、多くは現在もライデン国立民族学博物館に保存されています。観光丸はその後、幕府の海軍練習艦として利用され、1855年から1856年にかけては長崎での海軍教育が行われ、海外派遣研修も実施されました。

海軍教育の重要性

観光丸では、当時の海軍指導者であるペルス・ライケンも教官として尽力し、教育のみならず実際の航海訓練も行われました。安政4年には、長崎から江戸へ航海を行い、その過程で江戸に軍艦教授所が設立されるきっかけとなりました。

また、万延元年（1860年）には佐賀藩に預けられ、1865年には再び「観光」と改名されました。観光丸は幕府の新たな艦船に含まれるようになるとともに、陸上の动きに対応するため、海上でも活躍しました。1864年には神戸に返還され、その後も数回にわたり観光丸は日本の軍艦として使用されました。

明治維新後の運命

やがて、1868年に観光丸は明治政府の軍艦となり、その後横須賀に繋留されました。しかし、艦齢18年となった同年に廃船の報告もあり、1876年には正式に除籍され解体されてしまいます。最終的な動きは、軍艦としての役目を終え、海軍の歴史の一コマとして記録に残りました。

復元船の誕生

1987年には、観光丸の復元船が長崎のハウステンボスで進水しました。この復元船はオランダの設計図を基に建造され、当時の姿になるべく近い形式で完成しましたが、機関についてはディーゼル機関が搭載されています。観光丸の歴史的な意義は今なお多くの人に知られ、訪れる人々に日本の海軍の誕生とその理念を伝え続けています。

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