鵼の碑

京極夏彦『鵼の碑』：17年ぶりの百鬼夜行、過去と現在が交錯する長編推理小説

京極夏彦による推理小説『鵼の碑』は、「百鬼夜行シリーズ」として2006年の『邪魅の雫』以来、実に17年ぶりの書き下ろし長編作品です。2023年9月14日に講談社から刊行されました。

作品概要

物語は昭和29年を舞台に、過去の未解決事件と連続殺人、そして消えた死体の謎が複雑に絡み合います。木場修太郎、関口巽、中禅寺秋彦といったシリーズおなじみのキャラクターに加え、新たな人物も登場し、事件の真相に迫ります。

過去作との繋がり

本作は、過去作との繋がりも深く、『百鬼夜行 陽』に収録された短編「墓の火」「蛇帯」は前日譚にあたり、『今昔百鬼拾遺 鬼』には同時期に起きた事件が描かれています。

また、各パート（蛇、虎、貍、猨、鵼）には過去作のエッセンスが割り振られており、宮部みゆき氏が「百鬼夜行版アベンジャーズ」と評するほど、過去作の登場人物が多く登場します。「巷説百物語シリーズ」「書楼弔堂シリーズ」との繋がりも示唆されています。

あらすじ

昭和29年。木場修太郎は、かつて長門五十次が関わった未解決事件について聞かされます。それは、3人が殺害され、死体が消えたという、まるで狸が化かしたかのような不可解な事件でした。木場は桐山という人物を探すために日光へと向かいますが、そこで郷嶋郡治と遭遇し、関口や中禅寺も来ていることを知ります。一方、益田龍一も人探しの情報を求めて桐山を探していました。そして、緑川佳乃は、亡くなった大叔父の医院を整理に来たところ、大叔父の友人だという老人・桐山に出会います。

主要な登場人物

久住加壽夫：「蛇」の章の語り手。脚本家。
御厨冨美：「虎」の章の語り手。薬剤師。
木場修太郎：「貍」の章の語り手。刑事。
築山公宣：「猨」の章の語り手。学僧。
緑川佳乃：「鵼」の章の語り手。医師。
関口巽：小説家
中禅寺秋彦：古書店「京極堂」店主
益田龍一：薔薇十字探偵社探偵
郷嶋郡治：公安調査庁調査官
鳥口守彦：三流雑誌記者
榎木津礼次郎：薔薇十字探偵社探偵長
青木文蔵：刑事
桜田登和子：日光榎木津ホテルメイド
笹村倫子：日光榎木津ホテルメイド

物語の舞台

物語の舞台となるのは、主に以下の場所です。

日光：事件の真相に迫る重要な場所。
日光榎木津ホテル：登場人物たちが滞在するホテル。
寒川薬局：薬剤師の御厨冨美が勤務する薬局。
尾巳村：事件の鍵を握る場所。

刊行背景

2006年『邪魅の雫』の刊行以降、作者の多忙などにより刊行ペースが延び、『鵼の碑』は発売日未定の状態が続いていました。しかし、作者は執筆と構想を続け、2023年に発表されました。作者デビュー30周年という記念すべき年に刊行されたこともあり、ファンからは驚きと喜びの声が上がりました。

書誌情報

単行本版: 講談社、2023年9月14日発売、ISBN 9784065330722
新書版: 講談社〈講談社ノベルス〉、2023年9月14日発売、ISBN 9784065150450
* 文庫版: 講談社〈講談社文庫〉、2024年9月13日発売、ISBN 9784065362433

京極夏彦氏の緻密な構成と魅力的なキャラクターが織りなす、百鬼夜行シリーズ最新作『鵼の碑』。過去作との繋がりや複雑な人間関係、そして昭和という時代背景が、物語に深みを与えています。ぜひ、その世界観に浸ってみてください。

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