鶴仙渓

鶴仙渓（かくせんけい）

石川県加賀市の山中温泉に位置する鶴仙渓は、自然の美しさが詰まった渓谷です。この地域は、山中・大日山県立自然公園内にあり、明治時代の著名な書家である日下部鳴鶴が特に愛した場所としても有名です。

魅力的な景勝地

鶴仙渓は、大聖寺川の中流に広がる美しい渓谷で、砂岩の浸食によって形作られた数々の奇岩が見られます。代表的な岩には、烏帽子岩、蛙岩、弁慶岩などがあり、訪れる人々を楽しませています。また、約1.3kmにわたって設けられた「鶴仙渓遊歩道」は、南北に長い山中温泉街の東側に並行しており、観光客が散策を楽しむための場所にもなっています。

さらに、4月から10月にかけて、「鶴仙渓川床」と呼ばれる特別なエリアがあやとり橋のたもとで開かれ、訪れる人々に自然とふれあう素晴らしい機会を提供しています。

鶴仙渓の橋

鶴仙渓には、個性的なデザインの橋が3つ存在しており、それぞれ異なる魅力を持っています。

こおろぎ橋

こおろぎ橋は、鶴仙渓最上流に位置する橋で、全長21mの総檜造りです。この橋は、鶴仙渓及び山中温泉の象徴とも言える存在であり、多くの文人たち、例えば松尾芭蕉や竹久夢二などが訪れたことでも知られています。橋の名前は、昆虫のコオロギに由来するという説や、険しい路を表現した「行路危」という説がありますが、正確な理由は明らかではありません。

あやとり橋

こおろぎ橋から約800m下流に架かるあやとり橋は、平仮名で「ややとり」と書かれています。この橋のデザインは、華道草月流の家元である勅使河原宏によるもので、竜がうねるような独特の形状が特徴です。

黒谷橋

あやとり橋から500mさらに下流に位置する黒谷橋は、1935年に完成したコンクリートアーチ橋です。全長36mで、レトロな意匠が特徴的で、白を基調としたデザインが大正時代を思わせます。欄干や親柱には御影石が使用され、床板には小石を洗い出しした工夫が施されています。この橋もまた、松尾芭蕉が頻繁に訪れた場所であり、彼を祀るお堂である芭蕉堂が近くに位置しています。

道明が淵

あやとり橋の真下に位置する道明上の散策路に管理された道明橋周辺は「道明が淵」と呼ばれ、松尾芭蕉が「奥の細道」で訪れた名所として有名です。この地域は、2015年に国名勝「おくのほそ道の風景地」の一つとして認定され、多くの観光客が訪れる場所となっています。

しかし、道明橋は2021年6月に老朽化が確認され、その後通行止めとなりました。8月には亀裂の進行が見られたため、撤去の運びとなり、加賀市では景観に配慮しつつ橋の架け替えに取り組む計画が進められています。

鶴仙渓は、その豊かな自然と歴史的な背景から、訪れる人々に素晴らしい体験を提供する場所です。美しい橋と奇岩を楽しみながら、心癒される散策を楽しんでみてはいかがでしょうか。

もう一度検索