鶴山公園

岡山県津山市の中心部に位置する鶴山公園は、かつての津山城跡を活用した歴史公園です。「鶴山公園」または「津山城址鶴山公園」と呼ばれており、古くは「つるやま」と称されましたが、城および公園名は「かくざん」と読まれます。

公園の概要と見どころ

この公園は、江戸時代に築かれた平山城である津山城の主要部が整備されたものです。特に壮観なのは、地上から約45メートルに達する石垣の連なりで、築城当時の堅牢な構造を今に伝えています。

四季を通じて様々な花が訪れる人々を楽しませますが、特筆すべきは春の桜です。公園化された後に植えられた約1000本の桜が一斉に咲き誇る様は圧巻で、日本さくら名所100選にも選ばれており、西日本では有数の桜の名所として広く知られています。桜の開花時期には「津山さくらまつり」が開催され、夜間にはライトアップも行われ幻想的な雰囲気に包まれます。

また、秋には紅葉も美しく、10月下旬から11月中旬にかけて見頃を迎え、「津山城もみじまつり」が催されます。その他、4月下旬から5月上旬にかけてはフジやツツジも園内を彩ります。

歴史と整備の歩み

津山城は明治時代の廃城令により取り壊され、その跡地は民間に払い下げられるなどして荒廃が進みました。特に1873年（明治6年）の廃城令以降、城跡は桑畑や雑草に覆われた荒れ地と化していました。

しかし、1890年（明治23年）に腰巻櫓の石垣が崩落した出来事を契機に、津山城跡を保存しようという機運が高まります。翌年には「鶴山城址保存会」が設立され、保存活動が模索されました。当時の城跡の土地は国、県、個人の間で複雑に入り組んでおり、保存会による公園整備は困難を極めました。

この状況を打開するため、津山町が土地取得を進めます。1899年（明治32年）には県有地が無償で町に払い下げられ、翌1900年（明治33年）にかけて残る私有地の取得も完了しました。こうして城跡の土地が全て津山町の管理下に置かれたことにより、1900年春、鶴山公園が誕生し、一般公開が始まりました。

公園の開園後、その整備方針を定めるために町議会に公園委員会が組織されました。1902年（明治35年）には試験的に牡丹桜やソメイヨシノなどが植えられます。

公園に植えられた桜の多くは、その後の植樹活動によるものです。1907年（明治40年）、日露戦争からの帰還兵が桜の苗を寄付したことが大規模な植樹のきっかけの一つとなりました。さらに、1915年（大正4年）と1928年（昭和3年）の二度にわたる御大典記念植樹で約2000本の桜が植えられ、全山が桜で覆われる現在の景観の基礎が築かれました。これらの植樹活動の中心的な役割を担ったのが、私財を投じ、寄付集めにも奔走した当時の町議会議員、福井純一でした。

津山城跡は、1963年（昭和38年）9月28日に国の文化財保護法に基づき史跡に指定されました。天守閣などの建物は廃城令後まもなく解体されましたが、本丸・二の丸・三の丸の石垣は良好な状態で残されており、往時の威容を伝えています。

主な施設

備中櫓（びっちゅうやぐら）: 本丸御殿の南側に位置していたと伝わる櫓で、津山城築城400年を記念して復元されました。2005年（平成17年）春より一般公開されており、城郭建築の様子を見学できます。
文学碑: 園内には、松尾芭蕉、尾上柴舟、棟方志功など、著名な文学者や芸術家の句や詩を刻んだ碑が複数建立されており、散策しながら鑑賞することができます。
鶴山館（かくざんかん）: 元々は1765年（明和2年）に藩校として建てられた建物で、その後様々な学校などに使用されました。1904年（明治37年）に鶴山公園内に移築され、「鶴山館」と名付けられました。
鶴山城址碑: 1873年の廃城令で城が取り壊され、跡地が荒廃する中で、旧藩士たちが城の存在を後世に伝えようと1877年（明治10年）に本丸跡に建立した碑です。

過去には、三の丸に津山市立動物園（鶴山動物園）がありましたが、施設の老朽化に伴い2011年（平成23年）に閉鎖されました。その跡地は現在「津山城つるまる広場」として活用されています。

年間の催し

年間を通して様々な催しが開催され、多くの人で賑わいます。

1月：初日の出遥拝
4月：津山さくらまつり
5月：牛うまっ王選手権
9月：津山城観月会
* 11月：津山城もみじまつり

過去には、津山産業博覧会（大正6年）、産業振興大博覧会（昭和11年）、市制20周年記念博覧会（昭和34年）といった大規模な博覧会が開催された歴史もあります。特に昭和11年の博覧会では、姫路城を模した模造天守が建設され、市民に親しまれました。

アクセス

JR姫新線・津山線津山駅からは徒歩で約15分でアクセスできます。車で来園する際は、隣接する津山文化センターの駐車場などを利用できます。

鶴山公園は、歴史的な価値と美しい自然景観が融合した、津山市を代表する名所として、多くの人々に愛されています。

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