鶴御成

鶴御成の概要

鶴御成（つるおなり）は、江戸時代において将軍が実施した鷹狩の一環で、特に格式高い行事として知られています。この行事は、幕府の権威を象徴する重要なものであり、特に九代将軍徳川家重によって確立されました。鶴を捕獲し、それを朝廷に献上することが恒例となっています。

毎年11月下旬から12月にかけて、主に寒の入りの時期に行われ、千住三河島筋、小松川筋、品川目黒筋の3つの場所に設けられた飼付場で実施されます。これらの場所では、当初は18箇所ずつの鶴の集まりが確認されていましたが、次第に15箇所に減少しました。ここでは、それぞれの飼場に鳥見が配置され、天候やツルの動向に関して継続的に観察が行われました。

捕獲の準備

飼場では、下飼人とその見習いが日々ツルに餌をやり、ツルが人に馴れるようさまざまな工夫を凝らします。彼らは、ツルが定期的に現れる代（しろ）の様子を観察し、最初に降りてきたツルの情報を鷹匠頭に報告します。鷹匠頭はこれを確認した後に、若年寄に報告し、最終的に将軍へ日時が決定されるのです。

当日の行事

鶴狩り当日、将軍は藤色の陣羽織をまとい、従者たちは伝統的な服装を着用します。そして、将軍は特別に設けられた仮屋に赴き、鷹匠頭からタカを受け取ります。この際、鳥見が大きな日の丸の扇を掲げツルを探します。ツルが驚いて飛び立つ瞬間、タカを放つことで捕獲を試みます。

1羽のタカだけではうまく捕まえられない場合、鷹匠が次々とタカを放つこともありますが、タカ1羽でツルを捕獲するのは非常に困難なこととされています。捕獲されたツルは、鷹匠が特定の方法で処理し、タカに内臓を与えた後、急いで京都へ献上されます。街道を通る際は、その行事が「御鶴様のお通り」と称されました。

祝賀と報酬

捕獲をした鷹匠には金五両、タカを支配した者には三両の報酬が贈られ、その功績に対して捕獲に使用したタカには紫の房がつけられ隠居を命じられる習慣がありました。また、宴席では鶴の血をしぼった酒、いわゆる「鶴酒」が振る舞われ、参加した人々に振る舞われることが一般的になりました。

このように、鶴御成はただの鷹狩りではなく、将軍の権威や文化を体現した重要な行事として長く親しまれてきたのです。

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