鶴見園

鶴見園（つるみえん）

大分県別府市南立石にかつて存在した鶴見園は、大正時代から昭和戦前期にかけて運営された、温泉と娯楽を組み合わせた大規模な総合レジャー施設でした。とりわけ、劇場で上演された少女歌劇は「九州の宝塚」と称されるほどの人気を博し、鶴見園の大きな魅力となっていました。その規模の大きさから、自らを「九州一の大遊園地」と称していました。

開設経緯

鶴見園の開設者は、鉄道工事で財を成し、政治家としても活動した実業家、松本勝太郎です。彼は豊州本線（現：日豊本線）の工事で別府を訪れた際にその魅力に惹かれ、この地に一大レジャー施設を建設する構想を抱きました。1916年（大正5年）に広大な土地を買収し、庭園や本館、劇場などの建設を進め、1925年（大正14年）についに開園しました。

施設と人気

鶴見園は温泉施設に加え、約4万坪の敷地内に美しい庭園や、定員600名を収容する本格的な大劇場などを有していました。中でも、鶴見園女優歌劇による華やかなレビューや演劇は非常に人気が高く、遠方からも多くのファンが訪れました。温泉保養と質の高いエンターテインメントを同時に楽しめる施設として、鶴見園は別府の観光拠点の一つとして栄えました。

時代の影響と閉園

しかし、時代の流れは鶴見園に厳しい現実をもたらしました。太平洋戦争が始まると、戦時体制下においてレジャー施設への人々の出入りは著しく減少しました。経営状況が悪化した鶴見園は、ついに1943年（昭和18年）、開園からわずか18年で第一次閉園を余儀なくされます。

戦後から現在まで

終戦後、鶴見園の跡地は一時アメリカ軍に接収されました。接収解除後、敷地は長らく放置された状態が続きました。その後、1969年（昭和44年）4月11日には、跡地の一部を利用して「鶴見園レジャーセンター」として再出発を図ります。しかし、この再開は長くは続かず、わずか7年後の1976年（昭和51年）4月3日には、再び閉園という結果に終わりました。

現在、鶴見園の跡地は、鶴見園公園として整備されているほか、住宅地や商業施設に姿を変えています。かつての賑わいを伝えるものはほとんどありませんが、別府市南立石には今も「鶴見園町」という地名が残されており、この地に鶴見園が存在した歴史を伝えています。また、隣接していた鶴見園グランドホテルも、2001年（平成13年）以降休業状態が続いています。

鶴見園は、別府の観光史において、温泉とエンターテインメントを融合させた先進的な試みを行った施設として、その存在が記憶されています。

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